「デジタルファーストで地域が変わる
楽天 官民共創で地域に活力
自治体とのパートナーシップ領域を拡大」


楽天グループ株式会社 執行役員 コマースカンパニー COO&ディレクター
野原 彰人

 

 


 ※本記事は、2019年2月号 事業構想大学院大学 月刊「事業構想」から転載したものです。 記載の情報は2019年2月時点となっており、以前の情報が含まれておりますので、最新の情報は担当部署までお問い合わせください。

 

 ECから始まった楽天グループの事業は今、金融やメディア、通信、物流・農業支援など、幅広い領域に広がっている。楽天がグループサービスを活用し、地域課題の解決に力を注ぐ狙い、自治体との「共創」の取り組みについて、執行役員・野原彰人氏に話を聞いた。

 

野原 彰人(楽天グループ株式会社 執行役員 コマースカンパニーCOO&ディレクター)

 

 

創業時からの一貫した理念

― 楽天は自治体とパートナーシップを組み、地域経済の活性化にも力を入れています。

野原:楽天にとって地域に貢献することは、創業時からの理念です。1997年に設立され、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする(人々と協力してよりよい社会を築く)」という想いから事業をスタートしました。

日本経済を活性化するためには、地域経済を元気にしなければなりません。そのため、地方を含めた事業者の振興を目指し、まずはEC(インターネット通販)に力を注いだのです。そして、ECで実績を重ね、社会的に評価いただき、今では自治体とのパートナーシップを構築するに至っています。

代表取締役会長兼社長の三木谷浩史は、2013~2016年に開催された政府の産業競争力会議において、経済成長のためには生産性の向上が必要であり、ITの活用が不可欠という提言を続けてきました。そして今、政府でデジタルファースト法案が検討されているように、自治体を含めた社会全体が、デジタル化に前向きな時代に入りつつあります。

楽天はEC、フィンテック(金融)、通信など70を超えるサービスを手掛け、ITに関する豊富な知見を有しています。地域産品を全国に販売するといった取り組みだけでなく、域内事業者のキャッシュレス化の促進、AIやテクノロジーを活用した行政の業務効率の向上など、幅広い分野においてデジタルファースト化への支援を行うことができると考えます。

 

 

官民の垣根を超えて「共創」

― 地域活性化に向けて、具体的には、どういった取り組みを行っているのですか。

野原:楽天は現在、600を超える自治体と事業展開(2019年2月時点)し、そのうち、県や市町村、政令指定都市などの30の自治体*1 と包括連携協定を締結(2019年2月時点)し、官と民の垣根を超えた「共創」を進めています。

一例として2017年2月に協定を結んだ岩手県矢巾町では、「ビジュアルを活用した地域ブランディングとシティプロモーション」などに取り組んでいます。「つながるまち。やはば」をコンセプトに据え、ブランドロゴを制作。それを中心としたグッズやウェブコンテンツの展開、イベントの実施などを行っています。

 

岩手県矢巾町は、町の「らしさ」をビジュアル化。グッズやウェブコンテンツを展開し、全国へ発信している

 

同時に、「ふるさと納税の推進」にも力を注ぎ、2018年の町の年間寄付金額は、楽天と協定を締結する前と比較すると約322倍(2018年12月11日時点)に増えています。

矢巾町の人口は約2万7000人(2019年2月時点)。盛岡市のベッドタウンであり、町民の皆さんが「特徴がないのが特徴」と表現する町です。

しかし「やればできる」と熱い想いを持つ自治体職員の方々が動き出し、楽天市場に出店している酒蔵に自ら掛け合い、地元産のお米を100%使用した純米酒を開発しました。楽天との協定をきっかけに新たな取り組みが始まり、結果がついてくることで町に活力が生まれています。

また、別例として2018年12月の神戸市との協定が挙げられます。神戸市が抱える課題の一つが、若年層の流出です。市内には24もの大学がありますが、卒業後、多くの若者が神戸市を離れてしまい、この課題を解決するために、「大学等と連携した人材育成支援」を進めています。

楽天グループには、新たなテクノロジーを創出するための研究機関「楽天技術研究所」があります。アメリカ、フランス、インド、シンガポール、日本の5ヵ国で展開、世界中で最先端の研究を行っています。

今回の取り組みでは、神戸市内の学生が楽天技術研究所のメンバーと一緒に地域課題の解決に取り組むインターンシップを実施予定です。学生にとって、刺激を受けて触発の機会となり、人材育成につながるとともに、神戸市に定着するきっかけを生み出すことを目指しています。

 

 

各地の課題に応じた支援を提供

― 楽天の強みや今後の展開について、どのように考えていますか。

野原:楽天は、1つのIDで様々なサービスが利用できる環境をユーザーに提供しており、楽天会員数は1億を超えています。今後は、地域の課題解決に向けて、自治体が上手にこのようなプラットフォームを活用していく時代が到来することでしょう。

全国の各自治体は、地域ごとに個別の課題を抱えています。楽天はこれらのサービスとデータ活用の知見を組み合わせ、各地域の課題に寄り添って解決手段を共に創っていくことを目指します。

創業時からのEC事業では、ECコンサルタントが出店者の目標達成のため、一緒に考え汗をかくパートナーとして共に歩んできました。その企業文化は地域の課題解決においても変わりません。楽天は単なるベンダー(システム提供者)ではなく、パートナーとして自治体と一緒に課題の解決を目指します。

成果をあげている自治体に共通するのは、首長や職員の方々に熱い想いがあることです。「予算があるから」などの理由ではなく、本気で「自分たちで地域の課題を何とかしたい」という想いがなければ、共創は機能しません。

自治体とのパートナーシップをより深められるように、楽天自身も進化していきます。そして、楽天のデジタルプラットフォームの価値を数多くの自治体にご理解いただき、共創の取り組みを強化していきます。それは、地域活性の枠を超えて、日本経済の発展にもつながると考えています。

 

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野原 彰人
野原 彰人Nohara Akihito
楽天グループ株式会社 執行役員コマースカンパニーCOO&ディレクター


1963年生まれ。2003年楽天入社、楽天市場事業を担当。2005年執行役員(現任)。楽天KC(現楽天カード)取締役副社長、イーバンク銀行(現楽天銀行)代表取締役副社長、内閣官房出向を経て、2016年ECカンパニーCCO&ディレクター。2018年コマースカンパニーCCO&ディレクター、2019年コマースカンパニーCOO&ディレクター(現任)。