ユーザーが信頼できるツールの提供が不可欠
紺野:これまではデータと広告ビジネスの視点でお話していただきましたが、今度はユーザ観点でのお話を伺いたいと思います。今後、どういう風にユーザーの体験価値が上がっていくとお考えですか。
鈴木氏:安全安心というのが第一優先であることは変わりません。一方で、データ量は今後ますます増大していくので、それをどうやって取得していくかですね。そしてAIの活用はますます重要になります。
データ量の増大に関してのあるデータによりますと、メディアの消費時間が15年前に比べて1.4倍も増えているそうです。そのほとんどはデジタルです。その中で、これまでは購買したかどうかの情報だけだったのが、今は、例えば「メタバース内の店舗で商品を手に取ったけれど実際に購買はしなかった」というような行動の詳細もわかるようになりました。このようにますます増大していくデータに対して、AIの活用などにより本当に有用なデータを選定していくことが重要になってくると考えています。
紺野:膨大なデータを持っているグーグルの川合さんはどう思われますか。
川合氏:これからは、ユーザーの承諾によって企業側に提供するデータも増えていくと思います。また、少し前までは居住地や年代、性別を推定した上での広告配信でしたが、今はリアルタイムのデータだけでなく、少し先の傾向も推測できるような興味関心などをベースにした広告配信もより自然なこととなっています。
このような時に大切になってくるのは、ユーザーがオンライン上での利便性を高めるために提供した自分の情報が他の人に漏れることがないという技術の整備と、それに裏打ちされた信頼感の醸成です。
例え話で言うと、僕が紺野さんに打ち明けた秘密を、全然知らない人から「川合さん、こうらしいじゃないですか」と言われるような不安があってはいけないのと同じではないでしょうか(笑)
昨今のテクノロジーの進化によって、グーグル含め各社が、様々なデータをどう厳格に取り扱うか、一人ひとりのユーザーのみなさんが信頼して使用できるサービスを提供するために日々一生懸命考えています。一方で、ユーザーの立場でこれから何をしなければいけないかというと、自分が使おうとしているサービスやその企業が本当に信頼できるかどうかを考えることです。
紺野:そのためのツールをご提供なさっているのですね。
川合氏:今までもGoogleではユーザー情報や履歴をコントロールできる機能がありましたが、今後は広告へのデータ使用も一元的に管理できるような機能を提供する予定です。*注釈
紺野:ちゃんと秘密を守ってもらえるようになり、自分が秘密にしているのを宣言できるということですね。