東京の1人暮らしの大学生にアンケートをとると、自宅にテレビがない、という学生もかなりの割合でいるようです。テレビでリーチしようにも、そもそも、その受像機を持っていないという状況です。
また同じ視聴回数の場合、テレビ広告よりも、動画広告のほうが回数が少なくても、認知度などが上がりやすいというデータも出ています。これは、テレビが「ながら視聴」なのに対し、動画広告が、PCにせよ、スマホにせよ、画面にある程度、集中していることから起こっている現象だと考えられます。
10代、20代、30代には、確かにある一定層はテレビを見る時間が非常に短い人たちが存在しますので、そういう人たちに対して、動画広告(特に視聴シェアNo.1のYouTubeなど)は、リーチ効果が認められると思います。
ただ、このあたりも、テレビだと、訴求商材ごとに、リーチと認知の相関性、有効フリークエンシーと態度変容の関係などが統計的に蓄積されているのに対し、まだWEB動画広告は、そこまでの指標は持てていません。テレビだと、有効フリークエンシーは、最低限これだけの回数は広告に接触させないと意味がない、というふうに考えられるのに対し、WEB広告では、フリークエンシーは、通常キャップ(制限)として使われることが多く、これ以上、接触させないでください、というものです。
ダイレクトレスポンスの目的で使われることが多いデジタル業界で、特にリターゲティングの流れで、このフリークエンシーキャップという考え方が浸透していますが、実際に、AIDMAで考えると、Attention、Interestをとるためには、最低限のこれだけは接触しないと効果がない、有効フリークエンシーの考え方が、WEB広告にも必要だと思います。ここは、我々も今後、実験を重ねて証明をしていきたいと思っています。
実際に、テレビ広告の認知度調査は、被験者に対して実際のCMを見せながら、「このCMを覚えているか」と尋ね、「見たことがある」「見たような気がする」と答えた人をあわせて認知率(助成想起)とすることが一般的です。本来のAttention、Interestの意味では、ここは純粋想起に指標を置きたいところですし、さらにいうと、認知度だけでなく、興味関心、購買意向までいくと、もっとフリークエンシーは必要だと思います。
ここでフリークエンシーを重ねるにあたって大事なことは、受け手の興味・関心としっかりマッチしているかだと思います。
極端な例だと、女性向け化粧品の広告を繰り返し男性に見せると、やはりイヤになってきます。ある外資系広告主は、ターゲット外に広告を見せることを明確にブランド毀損だと考えています。一方で、同じその男性に対して興味がある、車や時計の広告、しかも、クリエイティブのパターンが複数あると、むしろ、回数を重ねるたびに、そのブランドに引き込まれていきます。
この視点を、もっとWEB動画広告は注目されるよう、しっかりとエビデンスを確立していきたいと思っています。
今後の挑戦。データ×クリエイティブで、新たな需要を創り出す。
先ほどの興味・関心とマッチングしているか、というテーマにおいて楽天のデータが果たす役割は今後も大きくなると感じています。
従来、ターゲティングは、いわゆるセグメンテーションを行い、その中のこのセグメントを狙う、というマーケティングのSTP(Segmentation, Targeting, Positioning)に基づくものでした。
自分たちの商品ターゲットはこの人たちで、ここに響く言い方としてはこのようなクリエイティブがいいだろう、というものです。
WEB広告がかなり浸透してきた今でも、クリエイティブは、マス向けクリエイティブと同じものを使っている状況が多いと感じます。
これは、ある意味、マーケッターが自ら可能性を狭める行為を行っているのではないかと感じます。30代がターゲットだとして、本来は、その中にもいろんな興味関心を持つ人がいるので、ターゲットを絞っていくのではなく、それぞれのセグメントに、適切なコミュニケーションを提案してみる、可能性を探る、ということができると思っています。
極端な話、クリエイティブを10パターンぐらい作り、どのセグメントには、どのクリエイティブが響くのかを検証するやり方です。ここでいうクリエイティブはデザインというよりも、コピー(訴求ポイント)の方向性の違い、のことです。たとえば、ヨーグルトであれば、訴求ポイントは「健康」なのか「美容」なのか、「ダイエット」なのか「病気予防」なのか、それとも「朝食に」なのか。いくつも訴求ポイント、戦略を変え、それがどのセグメントユーザーにもっとも反応があるのかを、見ていくということです。