花王株式会社
トライアル購買促進(リアル店舗)と「楽天市場」への購買導線構築による顧客定着促進<前編>
- 認知
- 興味関心
- 購買
- リピート・ファン化
花王株式会社
花王株式会社
コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター
ECビジネス推進部 部長
生井 秀一氏
花王株式会社
コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター
ECビジネス推進部 プラットフォーマービジネス室長
森竹 麻衣氏
花王株式会社
コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター
ECビジネス推進部 リーダー
高坂 麻紗子氏
花王株式会社
コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター
ECビジネス推進部 リーダー
正呂地 稔氏
花王株式会社
コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター
ECビジネス推進部 ECトレードマーケティング室
川原 美佐子氏
花王株式会社
コンシューマープロダクツ事業部門
ホームケア事業部
中本 光亮氏
楽天グループ株式会社
グローバルアドディビジョン DX企画部
ヴァイスジェネラルマネージャー
山口 高志
楽天グループ株式会社
グローバルアドディビジョン 広告営業統括部
ヴァイスシニアマネージャー
細川 大
楽天グループ株式会社
テクノロジーサービスディビジョン
グローバルデータ統括部マネージャー
水口 真
楽天グループ株式会社
グローバルアドディビジョン アドプロダクト統括部
アシスタントマネージャー
田山 直樹
※広告商品名「RMP - Omni Commerce」は取材時の名称です。2024年7月より「オムニコマース」へ変更となりました。
― 今回施策を行った商品を教えてください
中本氏:「キュキュット」ブランドでは、共働き世帯の増加やライフスタイルの変化により食器洗いの負担を少しでも軽減したいという生活者ニーズにお応えするために、食器洗いのお困りごとを解決する専用商品(アシスト剤)をラインアップしています。今回は、その中の「キュキュット あとラクミスト」という商品でプロモーションを実施いたしました。
食後に「キュキュット あとラクミスト」をスプレーしておくと、酵素が汚れの内部に浸透し落としやすいように汚れを分解。さらに、この汚れを分解した状態を長時間キープするので時間が経った洗いにくい汚れもスルッと簡単に落とせるという、家事の負担を少しでもラクにするコンセプトメイキングにより発売した商品になります。
― プロモーションの目的と背景は、どのようなものだったのでしょう?
中本氏:今回の施策を開始する前から、様々なレシピサイトや料理系メディア、インフルエンサーとコラボレーションをさせて頂いており「キュキュット あとラクミスト」は、レシピサイトをよく利用している料理好きな方に愛用されているというデータを得ていました。そのデータを基に、さらに市場シェアを拡大させる方法を模索していたところ、花王株式会社(以下、花王)でインターネット・ショッピングモールの「楽天市場」を主に担当している正呂地から楽天グループとの協業の話を受け、楽天グループとお取り組みをご一緒させていただくことにしました。
今回の施策で設定したKPIは二つあります。まず一つ目は、レシート画像を送付すると「楽天ポイント」を獲得できる楽天グループのサービス「Rakuten Pasha」を活用し、オフラインでの購買データに基づいた楽天IDマーケティングソリューション「RMP - Omni Commerce」のソリューションによって、リアル店舗での「キュキュット あとラクミスト」のトライアル購買に繋げることです。私たちも様々なデシタル広告施策を行っているのですが、デジタル広告施策を展開した際、リアル店舗での実購買に至るまで、シームレスにマーケティング施策を繋げていくという点に課題感を持っておりました。つまりデジタル広告施策における、リアル店舗での実購買検証が困難だったのです。その課題解決を図るために定めたのが、このKPIでした。
二つ目のKPIは、楽天グループのレシピサイト「楽天レシピ」の広告プレイスメントに5種類のバナークリエイティブを出し分け、それらをデータドリブンに分析することで、セールスコピーや商品パッケージに活かせるポイントを発見することと定めました。
― 施策を開始するにあたり楽天グループを選ばれたポイントはありますか?
生井氏:様々な広告において楽天グループとは2013年頃から取り組みを行ってきました。楽天グループの魅力は、膨大な購買動向分析データを蓄積されている点です。花王はこれまで、テレビCMを投下し、広く認知を取るマスマーケティングをずっと行ってきました。しかしながら、消費者のニーズが多様化してきており、広告を消費者に届ける方法を見直す必要性についてかねてから検討しておりました。花王の様々な商品特性に応じて、興味関心を抱く消費者を仮説立てして、楽天グループが蓄積しているマーケティングデータからその仮説に基づいたターゲット層を抽出し、その抽出したターゲット層だけにデジタル広告を打ち効果を検証。ターゲット層と、届けたコミュニケーションが適切なものであったのかどうかを事後検証しながらPDCAを回し、デジタル広告効果の最適化を狙うという楽天グループとの協業は、花王としても良い取り組みになっています。
― 今回行った施策はどのようなものだったのでしょう?
田山:今回は2021年2月から3月の2ヶ月間で、「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションによる、アクイジションファネルの「キュキュット あとラクミスト」の認知獲得からトライアル購買促進までの一気通貫施策をご実施させていただきました。ファーストスコープの狙いとしては、「キュキュット あとラクミスト」の認知獲得と、利用シーンを踏まえた商品の理解促進をきちんと消費者にすり込むこと、そして、商品に対する好意形成が構築された状態で、リアル店舗におけるトライアル購買を発生させるまでをシームレスに一気通貫させることでした。
もう少し掘り下げますと、まず、施策前の0次分析として、「キュキュット あとラクミスト」を購買する可能性が認められるターゲット層を追求したところ、複数のクラスターが出現してきました。その各クラスターを楽天グループが持つAIエージェント「Rakuten AIris」で拡張した上で、「楽天レシピ」の全面型広告という、いわゆるジャック型の広告プレイスメントを活用した高精度リーチによる認知獲得、そして、この広告プレイスメントで認知を獲得したユーザー層を、「楽天レシピ」のドメイン配下に設置した「キュキュット あとラクミスト」とのタイアップLPへと誘導していき、「キュキュット あとラクミスト」の理解促進と利用シーンのすり込みを行った上で、リアル店舗でのトライアル購買の発生を狙いました。
また、花王様は単発的に終わるようなプロモーションにはご興味が無いことを私としては予め想定しおりましたので、プロモーションのプランニングを、楽天グループが得意とするデータマーケティングとして発展的なものにカスタマイズさせていただきました。継続型のマーケティングプロモーションに昇華させるため、プロモーション事後に再度ターゲット層を分析してチャンスセグメントの導出も行っております。また、楽天グループのリサーチ会社とも連携して、「楽天レシピ」と「キュキュット あとラクミスト」とのタイアップLPに接触したターゲット層に対して、認知から購買までのアクイジションファネルにおける態度変容のリフトアップが効果的であったのかを可視化するボトルネック分析も行い、ターゲット層となるクラスターが、「キュキュット あとラクミスト」とのタイアップLPにランディングした際の意識の変化までも追いかけました。
これら代表的な事後分析の実行は、前述の通り、花王様は単発で終わるようなプロモーションではご満足されないマーケティング視座をお持ちであるとの想定から、プランナーである私とデータサイエンティストの水口でソリューションを検討し実行することで、花王様のデータマーケティングに少しでも伴走できるのではないかと考えたためです。
― 「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションはうまく機能しましたでしょうか?
中本氏:今回、花王としては初めて、「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションを活用させて頂いたのですが、リアル店舗でのトライアル購買促進という一つのKPIに対して、プロモーション開始時の想定を大きく上回る結果となりました。当初は2ヶ月間のプロモーションとして、リアル店舗でのトライアル購買のシミュレーションが算定されていたのですが、プロモーション開始から僅か1週間程度で目標をほぼ達成してしまい、最終的には約3週間でシミュレーションの約1.8倍となるリアル店舗でのトライアル購買件数につながりました。
要因として考えられる要素は、楽天グループのプランナーである田山さんからご報告頂いた通り、「Rakuten Pasha」を活用するユーザーにとって、「花王」というブランドと、「キュキュット」というブランドが魅力的に映ったという点から、「Rakuten Pasha」のユーザーがアクティブに動いたこと。「楽天レシピ」とお取り組みさせていただいたタイアップLPの中で繰り広げるコミュニケーション設計において、「キュキュット あとラクミスト」を購買しているターゲット層が、「楽天レシピ」の中でどのようなレシピを検索しているのか事前分析をしていただき、その購買者と関連性の高いレシピを連動させる形で、「このレシピで料理する際に出てくる食器類の汚れは『キュキュット あとラクミスト』で落としやすい」というようなコミュニケーションコンセプトの下、利用シーンを具体的に示すコンテンツを作っていただいたことが考えられます。
また、「楽天市場」で「キュキュット あとラクミスト」を購買している実際のユーザーレビューを掲載していただき、商品の信頼性をきちんと表現できたことで、商品のUSPや必要性を自分事として捉えたユーザーのパーセプションチェンジが起こりました。こちらも最終的な成果に繋がったのではないかと考えています。
レシートをユーザーにアップロードしていただくことで楽天ポイントが貰える「Rakuten Pasha」の仕組みを活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションの利点は、全国規模でプロモーションができることです。また、スピード感をもってプロモーションが実施できることも花王として魅力的でした。これまで、あまりこのようなソリューションをご提案頂いたことがなかったのですが、実際にプロモーションを実施してみて振り返りますと、花王がこの施策に対して期待していたKPIは十分に達成できたと評価しております。
山口:リアル店舗での購買に関しては、決済の領域でクレジットカードや電子マネーなどがあります。しかし例えば今回のプロモーションのように、「キュキュット あとラクミスト」に絞ってプロモーションを実施するとなると、クレジットカードや電子マネーでは、商品を特定する工程で様々な制約が出てきてしまい、スピード感をもってプロモーションを実行することがなかなか困難です。一方、「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションの特徴は、レシートに印字されている内容をOCRで読み取るというアナログ的な手法ではあるものの、各流通店舗様にオペレーションの負荷をかけずに、さらにスピーディーにプロモーションを実行できることです。
今回のプロモーションで十分な成果を生み出せたのは、「Rakuten Pasha」のサービスローンチから約2年が経ち、一定のアクティブユーザーが付き規模感を出せるようになったことも、その一助となっていると思います。
細川:一般的に広域営業部といわれるような各流通店舗様に向き合っている部署との連携はスムーズに進みましたでしょうか?「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のようなソリューションに対して、各流通店舗様に向き合っている部署の関心が比較的低いという話しもクライアント様から耳にするのですが、花王様のご状況はいかがでしたでしょうか?
中本氏:当初は、トライアル購買として期待できるシミュレーションの算定はあったものの、「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションで得られる実際の効果に対して、どの程度の期待値を持って良いのか正直分かりませんでした。各流通店舗様に対しても、どこまで期待して頂けるプロモーションになるか判断できなかったため、花王の社内における情報発信を一先ず控えていた部分がありました。
しかし、全国津々浦々から十分なトライアル購買と、それに紐づく膨大なマーケティングデータを蓄積できた今は違います。楽天グループの「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」のソリューションを実施することで、間違いなく各流通店舗様のセルアウトが見込めると自信を持って伝えています。現在も田山さんと、このソリューションを今後も活用するため緻密にディスカッションし、計画に落とし込もうとしているところです。
花王の社内では、各流通店舗様の店頭をしっかり作り込んで欲しいと発信しつつ、私がいる部署で完結させる施策に留めることないよう、各部署との連携を強めております。その結果、支社などからも今回の「Rakuten Pasha」を活用した「RMP - Omni Commerce」の詳細が知りたいとの問い合わせが届くようになってきています。
※広告商品名「RMP - Omni Commerce」は取材時の名称です。2024年7月より「オムニコマース」へ変更となりました。詳しくは下記をご覧ください。
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日清オイリオグループ株式会社