ID経済圏を活用した購買起点のマーケティング


楽天グループ株式会社 副社長執行役員CRO
アド&マーケティングカンパニー プレジデント
有馬 誠

 

 


Rakuten Marketing Platform が目指してきたこと

Rakuten Marketing Platform(以下RMP)は、楽天が提供する、ユーザーの消費行動の全ての段階に対応するフルファネルのマーケティングソリューションです。私たちは、RMPを通じて楽天グループが蓄積する購買データをソリューションとして広告主の皆様にご活用いただき、できるだけ簡単により広く使っていただけるプラットフォームを目指してきました。

現在、楽天は、国内EC流通総額4.5兆円(注1)分のオンラインの購買データを蓄積しています。また、市場規模としてまだまだ圧倒的に大きなオフラインのデータも、ユーザーが店頭で「楽天ポイント」を貯め、使うごとに蓄積されています。

一方で、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)やアメリカのCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)に続いて、日本でも来年から本格的に改正個人情報保護法が施行されます。楽天全体ではもちろんのこと、RMPでは広告事業としてデータをどのように活用・収集・蓄積するのか透明性を持って示していかなければならないと責任を強く感じています。

(注1)2020年。国内EC流通総額(一部の非課税ビジネスを除き、消費税込み)=市場、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、デリバリー、楽天24などの日用品直販事業、オートビジネス、ラクマ、Rebates、楽天西友ネットスーパー等の流通額の合計

 

楽天として対応していること

 

楽天では情報セキュリティとプライバシーを最重要課題とし、日本企業としては初めてEUデータ保護機構からBCR(Binding Corporate Rules:拘束的企業準則)の承認を取得しました。また、広告審査体制として差別や不適切な表現を看過しないための厳格な基準を設け審査を行っています。

RMPのソリューションをいくつかご案内させていただきます。
まず、楽天のデータ解析部門と共同で開発した「Rakuten AIris」では、楽天が蓄積しているユーザーの購買データや検索・サイト訪問履歴を含めた消費行動のデータを元にユーザーを可視化してAIの拡張技術を駆使し、潜在購買層にターゲットを絞ったマーケティングが可能です。ごく少数、例えば100人の消費行動から10万人の潜在購買層を見つけ出すことができるのです。

次に、「楽天市場」の検索連動型広告である「RMP - Sales Expansion」は、画期的なEC拡販ソリューションです。従来、各店舗様に使っていただいていた広告手法をメーカー様に公開することによって、ユーザーが入力した検索ワードから、実際にその商品が販売されている店舗様への誘導が可能となりました。

 

RMP - Sales Expansion 楽天市場の検索結果に広告掲載する画期的なEC拡販ソリューション

 

楽天の場合、オンラインで配信した広告をどのような層が見たのかを把握することができます。そしてオンライン広告を見た人たちの購買行動から、それがいかにオフライン(店舗)での購買に有効かを計測することができます。これは究極のマーケティングソリューションではないでしょうか。

できるだけ広くデータをご活用いただくために広告代理店様と開発したソリューションもあります。例を挙げると、株式会社電通様・株式会社電通デジタル様との協業で広告配信プラットフォームと楽天のデータを活用してセグメント化する手法です。

例えば、ある商品を購買したことがあるユーザーだけに広告を見せることも簡単にでき、それを楽天だけでなくFacebookやGoogleなど一般的なプラットフォームに配信することが可能です。これは主として電通様・電通デジタル様に販売・運用していただき、楽天はデータの分析(注2)とプラットフォームの開発といった分担でサービスを提供しています。

一つ目の事例として、キッコーマン飲料株式会社様との取り組みを紹介させていただきます。

「つぶ野菜」「リコピンリッチ」シリーズは、一度飲むと確実にリピートにつながるようなキッコーマン様の自信作です。新商品はまずはお客様に試していただくことが重要ですが、このコロナ禍で試飲や試食などの店頭キャンペーンができません。そこでレシート画像を送付すると「楽天ポイント」を獲得できるサービス「Rakuten Pasha」を活用し、実際に店舗で「つぶ野菜」「リコピンリッチ」シリーズの商品を購入するとポイントが付与されるキャンペーンを実施しました。

この施策を通してPDCAサイクルが実現したと認識しています。ユーザーの購買行動を把握し、購買者に再度クーポンを送る、広告を見ていただくなどしてリピーターの育成までが可能となったのです。

(注2)個人が特定できない状態に加工した分析結果を開示します。

 

キッコーマン飲料株式会社様との取り組み

 

マーケティングにおいて獲得単価は重要なポイントですが、結果的に従来手法より安価にトライアルユーザーを獲得することができ、「つぶ野菜」シリーズにおいては新規率90%という今まで経験したことのない数値を出すに至りました。

 

 

ケーススタディ:花王「キュキュット あとラクミスト」

二つ目の事例として、花王株式会社様との取り組みをご紹介させていただきます。

花王様の「キュキュット あとラクミスト」の施策では、「Rakuten Pasha」を通じてユーザーが送付したレシートデータを「Rakuten AIris」で拡張し、1億以上の楽天会員から探し出した潜在購買層に向けて「楽天レシピ」という媒体でプロモーションを実施しました。結果として店頭での購買を促進できたのですが、これも従来では考えられなかった手法です。

 

花王株式会社様との取り組み

 

今回の施策で元となったデータは「Rakuten Pasha」を通じて送付されたレシートでしたが、現在、多くの小売・流通様で使える「楽天ポイント」や、「楽天市場」での購買によって蓄積されたデータも活用することができます。100人分くらいのデータがあればそれを1万、10万に拡張することが可能であり、非常に効率よく潜在購買層を獲得できる仕組みとなっています。

 

 

購買データを活用したマーケティングの始め方

このように楽天のオンライン/オフラインでの購買データの威力や価値はご理解いただけたと思います。そこで、広告主様から「どこから始めたらいいのか」という声をよく頂くのですが、まずはお問い合わせいただけましたら「楽天ポイントカード」加盟店(注3)や「Rakuten Pasha」を通じた商品の売り上げや購買ユーザーのペルソナなどの分析情報をご提案します(注2)。

その情報を元に皆様に商品を選んでいただき、オンライン/オフラインで商品の売り上げを伸ばすための最適な施策をご提案します。データ分析結果の提供までは無料トライアルですのでどうぞお気軽にお問い合わせください。

(注2)個人が特定できない状態に加工した分析結果を開示します。
(注3)マーケティング施策におけるデータ利用に同意している店舗のみが対象となります。

 

購買データを活用したマーケティングのはじめかた

 

インターネット業界の中でECと広告というのはそれぞれ別の進化を遂げてきましたが、昨今、その壁はなくなりました。オンライン広告はオフライン購買に明らかな影響をもたらしており、メディア接触頻度としてはオンライン広告がテレビ視聴の2倍以上になっているとも言われています。

オンライン/オフライン両方を生かしてマーケティングに取り組む時代が到来したと考え、当社は携帯事業にも進出し、また金融事業も絶好調です。私個人としては25年間この業界におりますが、ようやくここまできたという思いと、店舗購買への貢献という意味ではまだまだこれからだと認識しており、引き続き見届けていきたいと考えています。

 

有馬 誠
有馬 誠Arima Makoto
楽天グループ株式会社 副社長執行役員CRO
アド&マーケティングカンパニー プレジデント


京都大学卒業後、倉敷紡績株式会社(クラボウ)入社。株式会社リクルート、ヤフー株式会社 常務取締役、グーグル株式会社 代表取締役を歴任。2017年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)副社長執行役員兼CROに就任。同年、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)と株式会社電通の互いの資産・知見を融合したジョイントベンチャーの楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長に就任(現任)。2018年7月メディア&スポーツカンパニープレジデント就任。2021年1月から現職。