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ECを活用したマーケティング最前線
~購買データに基づくブランドマーケティングとは~

楽天株式会社 執行役員 グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター
紺野 俊介

広告効果を評価できないメーカーの課題

 本日は楽天のデジタルマーケティングにおける取り組みについてご紹介いたします。

 TVを中心としたマス広告に継続的に広告出稿しているが、実際どの程度売り上げに寄与したかが不明瞭、というのはよくあるケースです。TV CMともなると、キャスティングから半年かかることも一般的です。一度出稿すると後から改善ができないなど、融通が利かない点も多々あります。店舗販売に関しても、販促効果をすぐに確認できず施策改善に時間がかかる、といった問題があると認識しています。

 そんな中、デジタル広告がここ3年ほどで非常に伸びてきています。従来、デジタル広告と言われているのは、GoogleやFacebookなどの配信プラットフォームから、各社のサイトやランディングページにユーザーを誘導するというものです。しかしここでも、購買への貢献度が不透明という課題がありました。集客効果はCPCで間接的に評価するしかなく、アドフラウドによってCPC自体の信憑性が損なわれ、ビューアビリティに含まれない無駄な広告費が発生していました。また、ブランドセーフティの面でも課題があり、デジタルマーケティング自体がブランド毀損のようにメディアに取り上げられることもありました。

 

購買データを基にした楽天のソリューション

 楽天では、現在自社での広告配信プラットフォームを構築しています。広告主は、楽天の広告配信プラットフォームから、「楽天市場」内の商品紹介ページや購買ページにユーザーを誘導することが可能です。これにより、最終的にどれだけ広告が購買に繋がったかを明確にし、どのようなユーザーが購入したのかを適切な形で追うことができます。これが、大きな視点での楽天のアプローチです。

 

楽天のアプローチ

 

 楽天の場合、配信面が「楽天市場」内であるため、ブランドセーフティが担保されています。また、楽天ドメインを活用することで適切に媒体の配信をコントロールし、購買を起点に配信ロジックを組んでいるため、不正購買が起きづらくなっています。購買起点で配信できるということが、楽天の強みです。

 購買という明確にユーザーが行っているアクションに対して適切な配信を提供していくのが、楽天の取り組みです。一番大きなポイントは、購買データだけでなく、楽天IDを中心とするユーザー属性情報の最適化によって実現できる広告メカニズムであるということです。

 

自動車パーツ企業様の事例

 

 本来必要なクリック数だけを創出できればいい、という考え方もあります。しかし、楽天の広告配信は、最終的にクリックを生み出すことではなく、購買を生み出すことを目的としています。そのため、広告に結びつかないクリックは結果として減っていくという現象が起きています。この自動車パーツ企業様の場合、クリック数は40%まで減ったものの、商品ページまで到達した人は160%にのぼっています。さらに「楽天市場」での購買数は、400%まで増加しました。これは楽天の中での最適化なので、精度も高くわかりやすいケースですが、こういったケースを一つ一つご紹介するために、クライアント様との実証実験を行っています。

 

3本柱で事業を強化している楽天エコシステム

 

3本柱で事業を強化している楽天エコシステム

 

 私たちのキーポイントである大きな仕組みは、ブランド、メンバーシップ、データの3つです。

 ブランドとは、ユーザーの体験を豊富にする仕組みを様々な形で提供することで、広告主、ユーザーに対して、楽天というブランドをさらにメリットのあるものとして浸透させていくことを目的としています。今年は、新しく通信キャリア事業にチャレンジしていきます。

 メンバーシップに関して、楽天のポイントは楽天エコシステム内の様々なサービスと繋がっているため、通常のポイントメディアより多様なアクションをすることができます。これは、単純にポイントでユーザーを取り込むのではなく、楽天IDを活用することによって実現できる、新たな手法です。

 データに関する楽天の大きな特徴は、1億以上のIDが登録されていることです。これは日本の人口を網羅するほどの規模です。この楽天IDによって、ユーザーのさまざまな消費行動に対するアプローチを行っています。

 そして、先ほど申し上げたように、今年は新たな通信キャリア事業としてのチャレンジを仕掛けていこうとしています。ここにおいても、多様な形でユーザーに届くよう、データ活用を検討していく予定です。

 

メディアとしての「楽天市場」

 「楽天市場」では、2018年実績で、3.4兆円の流通、5万店舗弱の出店があります。この膨大な流通データに基づいてマーケティングを実現できることが、当社の特徴です。

 

国内最大級の「楽天市場」

 

 このデータを分析することで、見込み顧客に対するアプローチを行っています。オウンドメディアでは顕在層へのアプローチが多くなり見込み顧客へのアプローチまでたどり着かず、CPCが上がってしまうなど、思うような集客ができないケースもあります。

 一方、「楽天市場」の中にページを置くことで、非常に多くの接触者数を得られます。多くの接触回数を導き出し、滞在時間を伸ばすことで、ユーザーコミュニケーションを長く持つことが可能です。

 

メディアとしての楽天市場

 

 

楽天データを活用した広告サービス

 ここまで、楽天の取り組みや考え方についてご説明しました。ここから、具体的なサービスをいくつかご紹介いたします。

 

1. RMP - Brand Gateway
 「楽天市場」に出店している店舗であれば、ブランドテーブルとしていわゆるランディングページを「楽天市場」内に持つことができます。そこで最終的にデータを結び付け、楽天内でさまざまな手法でユーザーを誘導するという手法をとっています。

 

RMP - Brand Gateway(購買意欲の高いユーザーが集まるショッピングメディアで製品情報を効果的に訴求)

 

 また、「RMP - For Brands」というプロダクト名で、楽天のデータを用いたユーザー分析を可能にする仕組みづくりのための研究を進めています。楽天における消費行動分析データに基づいて好きなブランドを推測できるようなモデルを構築することで、企業のマーケティング活動支援を行っています。

 

2. RMP - Customer Expansion
 楽天では、データを分析するAIエージェント、「Rakuten AIris」を開発しました。膨大な1億以上のIDに基づく消費行動分析データやユーザー属性を920項目に分解し、解析することができます。広告配信においては、この技術を使って、拡張やセグメントを行い、広告会社を支援しています。また、IDに基づいて見込み顧客を抽出することも可能です。

 

RMP - Customer Expansion(楽天のビックデータを分析・活用するAIエージェント・Rakuten AIris)

 

3. RMP - Direct Message
 メールによる行動喚起も、データから属性を読み取り、適切な切り口でポイント付与というインセンティブを提供することで、まったく新たな見込み顧客の呼び込みが可能になります。私たちは、「楽天市場」だけでなく、「楽天カード」や「楽天銀行」等さまざまなメディア接触パターンを持っていますので、ユーザーの許諾を得て、メール配信からのアプローチをしています。メール配信のプログラムも、分析自体が購買を中心としたリアルなデータに結びついているため、行動に繋がる集客プログラムを提供することができます。

 

RMP - Direct Message(メール)(メールによる行動喚起)

 

4. RMP - Affiliate
 RMP - Affiliateは、「楽天スーパーポイント」をインセンティブとして活用するプログラムです。楽天グループ広告枠からの誘導やリスティング広告などを利用し、楽天グループ内外からアクティブユーザーを集客します。集客には購買を中心としたリアルなデータを用いているため、単純にポイントを付与するだけでなく何か行動を起こしてくれる質の高いユーザーに対する集客プログラムとなっています。

 

RMP - Affiliate(楽天スーパーポイントによる行動喚起)

 

 

オムニコマースに対応した楽天の動き

 リアルで利用するコンビニ、スーパー、ドラッグストアなどにおいては、データからユーザー属性を読見取ることが難しいという課題がありました。そこで、オフラインで購買を行ったユーザー層の楽天IDに基づいた属性等のデータを分析するという取り組みを加速度的に進めています。

 

Rakuten Pasha
 直近で提供を開始したサービスが、「Rakuten Pasha」です。ユーザーからのレシート情報と楽天のIDに基づいた属性等のデータを分析して、より高い精度で次回以降のマーケティング施策の見直しにつなげることができます。ユーザーにはインセンティブとしてポイントが付与され、メーカー側は、新商品の販売開始だけでなく、定番商品の再購買促進など、幅広いマーケティング活動においてご活用いただけます。

 

Rakuten Pasha(実店舗での商品購入にメーカーがポイントを付与できる成果報酬型の広告サービス)

 

Rakuten Merchant Cloud
 アメリカで先行して進めているサービスが、Curbsideを買収してスタートした「Rakuten Merchant Cloud」です。コーヒーチェーン店などに事前にオーダし、店舗の中に入ることなくピックアップできるというものです。これも私たちが保有しているテクノロジーとIDの蓄積によって、さらに充実したサービスになっていきます。

 

Curbside(アメリカにうける先行事例)

 

デジタルマーケティングの進出に新たな取り組みを続ける

 現在、日本のデジタルマーケティングは間もなく2兆円に届く規模です。日本の総広告費の30%ほどまでにデジタルマーケティングが伸長していますが、まだ楽天の取り組みは始まって数年です。私たちは2021年までに広告ビジネスを2,000億円にするという目標を掲げ、取り組みを進めています。これから、日本、そしてグローバルでのデジタルマーケティングを中心とした支援を進めていきたいと思います。

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天株式会社 執行役員
グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社入社、同年8月より現職。