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楽天が提供するマーケティングソリューション最前線
~データに基づくブランドマーケティングとは~

楽天グループ株式会社 執行役員 グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター
紺野 俊介

楽天の注力領域に「広告」

 楽天の可能性について、皆様あまり気づかれていないのではないのでしょうか。

 楽天は日本国内で最大級のIDがある会社で、その数は1億以上。当然、「楽天市場」のイメージが大きいかと思うのですが、昨今は「楽天カード」に代表される様々なFinTech(金融事業)の拡大もめざましく、今秋には、MNO(通信事業体)としても新しい事業を進めていく予定です。

 そして2018年度、楽天の注力領域にはじめて広告という言葉が入るようになりました。実は、2018年の IR報告で960億円にのぼる広告ビジネスを既に日本で展開しています。

 コマース・FinTech・モバイル・広告。今、楽天はこれらの事業を、ID・ポイント・ブランド・データという4つの機能をベースに展開しています。

 

楽天の注力領域

 

 

「購買データ」に基づいたデジタルマーケティング

 楽天の広告ビジネスにおける重要なポイントは、購買などの消費行動分析データ、つまり「買った」という証明です。

 私が楽天に入社したのは昨年のことで、前職ではデジタルマーケティングエージェンシーの代表と、運用型広告のトレーディングデスクの責任者を兼務していました。周知のとおり、コンバージョンは不正なアカウントやロボットによるクリックで最適化される問題があり、加えてユーザー行動の多様化により、セグメントに基づいたターゲティングがしづらいのが現状です。しかし、リアルなユーザーのIDがあり、ユーザーが何らのアクションをしたという確かな情報を持つコマースプラットホームなら、適正にデジタル広告のビジネスを実現できる可能性があります。私はそれが、国内最大級のIDがある楽天だと思うのです。

 「楽天市場」には約4万7千の店舗があります。一方で、メーカー企業様の多くがオウンドメディアをお持ちです。しかし、上記のとおり、仮説に基づいた広告配信になってしまったり、アドフラウドに巻き込まれてしまったりと、実際にはなかなか成果が現れないというケースが増えているのではないでしょうか。

 明確な購買データとIDを連携させることでブランド棄損をせずに意味のある広告を提供していくことが、メーカー企業様に求められていると考えています。

 楽天では、必要のないクリックを防いでいます。配信する必要性がないユーザーも整理することで、結果として購買数を増やします。自動車パーツ企業様のモデルケースでは、購買数が4倍になりました。さらに、ページへの接触者数を増やし、滞在時間を長くすることも、IDに基づくことで実現しています。

 

自動車パーツ企業様の事例

 

 

「RMP - Brand Gateway」「RMP - For Brands」

 楽天では一般的にオムニチャネルと呼ばれるものを「何らかの形でインターネットを介するすべての消費」を指す造語としてオムニコマースと呼び、国内で1億以上のIDをベースに様々な取り組みをしています。また、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、小売店舗などのオフラインデータも購買データと連携できるのです。

 

オムニコマースに対応した楽天の動き

 

 具体的に、購買データを活用した商品をいくつかご説明していきましょう。

 まずは「RMP - Brand Gateway」。「楽天市場」の中に各メーカーがブランドサイトを開設し、集ったユーザーを製品販売ページに誘導して購買につなげます。

 

RMP - Brand Gateway(購買意欲の高いユーザーが集まるショッピングメディアで製品情報を効果的に訴求)

 

 消費財のクライアント様が多いものの、自動車メーカー様のご利用もあります。楽天市場で自動車の購入はできないので、“試乗をするためにどこかのタイミングで販売店へ行きます”という、いわゆる「0円決済」による販促を進めています。

 飲料メーカー様の例では、ユーザーIDに基づくことで、競合会社に流れていきそうなユーザーの関心を引きつけるための施策を打つことができ、結果、特定のシェアで1位になったと聞いています。

 また、楽天グループと契約いただいた企業様向けには「RMP - For Brands」で、楽天IDにより、レポート分析、ブランディングコンテンツの管理などのマーケティング活動全体をトータルでサポートすることも可能です。

 

RMP - For Brands(楽天IDによりマーケティング活動全体をトータルでサポート)

 

 

「Rakuten AIris」

 次に、「Rakuten AIris」についてお話しします。これは、AI エンジンを使ったユーザー拡張の技術です。

 やはり大きなポイントは、購買データに基づいて拡張されるということです。オウンドメディアや、様々なマーケティング活動で取得したIDやペルソナ情報などをセグメントリサーチしたうえで「シード」として特定します。そしてAIにより楽天の1億以上のIDへ拡張し、シードと類似したユーザーへ広告が届けられるという仕組みです。コンバージョンの飛躍的な伸びが実証されています。

 

Rakuten AIris(楽天のビックデータを分析・活用するAIエージェント)

 

 

「RMP - Direct Message(メール)」

 メールマーケティングでは、「RMP - Direct Message(メール)」というサービスがあります。ユーザーにとって販促メールの多さはノイズのひとつですが、楽天のIDに基づいたデータベースへの配信であれば、非常に高いCTRを期待できます。

 

RMP

 

 

「RMP – Affiliate(ポイントギャラリー)」

 「ポイント」を活用した成果報酬型のサービスでは「RMP - Affiliate(ポイントギャラリー)」があります。楽天グループ広告枠からの誘導や、リスティング広告などを利用し、ネットアクティブな楽天ユーザーを集客します。IDに基づいた成果報酬型のサービスであるため、購買につながらないユーザーにポイントを提供することにならず、無駄がなく効率的です。

 

RMP – Affiliate(ポイントギャラリー)(楽天スーパーポイントによる行動喚起)

 

「Super Point Screen」

 今秋スタートするMNO事業により、広告ビジネスでも「位置情報」の活用が展開されていく予定ですが、先立って進めているのが「Super Point Screen」というサービスです。ダウンロード数は昨年100万を突破しました。

 位置情報によるタッチポイントでAndroidの場合はロック画面ジャック、iOSの場合はアプリ立ち上げで広告を表示します。その後、ユーザーが何らの行動を起こせばポイントを提供するというもので、接触するユーザーの多くは非常にアクティブです。

 

Super Point Screen

 

 ジオフェンスは数メートル単位で張ることが可能です。リアル店舗をお持ちであれば、商品に興味のあるユーザーが、例えば200メートルの範囲内に来たらクーポンを配布する、何かのプッシュ通知をするなど、様々なサービスを提供しています。昨年には、都内の花火大会で東京都と実証実験をさせていただきました。花火の前と後で、ユーザーがどこを通って帰るのかを検証したのですが、都が考えていた人の流れとは全く違う流れがあることがわかりました。

 このことから、リアル店舗への販促のほか、何か位置に伴ったマーケティング活動をしたいときにも非常に役立つのではないかと思います。

「Rakuten Pasha」

 そして、O2Oを活用した最も新しいサービスが「Rakuten Pasha」です。“パシャ(Pasha)”は写真のシャッター音から名付けました。

 具体的には、企業様が指定した対象商品を購入し、そのレシートを写真に撮って送ったユーザーに楽天スーパーポイントを付与するというものです。当然、レシートは何よりの購買証明です。

 楽天のIDに紐付いたポイント付与なので、どのようなユーザーが購入したのか、または購入しなかったのかというフィードバックが短いスパンで可能で、新商品の販促やマーケットリサーチに最適です。

 実際にいくつかのテストでは、ROASが250%以上という非常に高い成果が出ています。また実際には競合他社の類似商品発売のタイミングで販促をかけ、コンビニやスーパーなどでの棚落ちを防ぐというような活用もされています。

 

Rakuten Pasha(実店舗での商品購入にメーカーがポイントを付与できる成果報酬型の広告サービス)

 

「楽天データネットワーク構想」で三方良しの広告ビジネスを

 ここまで繰り返し、商品紹介と合わせて、データをどう活用するかというお話をしてきました。それは、ユーザー、媒体社、広告主である企業様、三方良しでなくては成り立ちません。

 ユーザーに対しては、良い広告・購買体験を提供していく。媒体社に対しては、良いサイトづくりにつながる適切なコストを返していく。そして、広告主に対しては、保有されているデータを楽天のデータときちんと結びつけることによって顕在データ、並びに潜在データをクリアにし、予算の最適化と効率的な広告展開を提供していく。

 楽天ではそんな「Rakuten Data Network構想」を描いており、構想の実現に向けて、昨年には合弁会社「楽天アドロール」を設立しました。

 

Rakuten Data Network構想

 

 また、これまで「楽天市場」をはじめとする楽天のサービスはPCデバイスで使われることが多いものでしたが、モバイルからの利用比率はどんどん高まってきています。私たち楽天としては、このような国内におけるデジタルマーケティングの大きな変化を、皆様と一緒に作っていき、これまでご紹介してきた商品を通じ、様々に広告ビジネスを展開させていただきたいと思っています。

冒頭写真のご提供:ブランドサミット事務局

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員
グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。