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『生活者』ファースト時代の楽天流IDマーケティング


楽天グループ株式会社 執行役員
紺野 俊介

 

 


変化するデジタル広告業界

 GDPR(一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、各国で様々な法規制が施行されたことにより、サードパーティーCookie規制を始めデジタル広告業界が変化しています。データは蓄積したり活用したりできますが、売買はできません。連携、共有、広告という考え方はできないのです。この点を理解していないと、多くのアドテクノロジー会社や事業主様も、従来行ってきたマーケティングや広告活動ができなくなるでしょう。

 約1.7兆円に成長したインターネット広告媒体費のうち、約3分の1をディスプレイ広告が占めています。ターゲティング、リターゲティング、リマーケティングという領域で、ビジネスモデルや手法を変更しなければならないタイミングが、今訪れていると考えています。

 楽天は1億以上の楽天会員とそれに基づく楽天IDを保有し、70を越えるサービスを展開しています。その「楽天エコシステム(経済圏)」では、ユーザーとの様々なタッチポイントを持っているため、それらのデータを活用してユーザーを可視化することができます。

 変化するデジタル広告業界の中で、楽天は、皆様に「楽天エコシステム」にどのように携わっていただくか、どうすれば広告に価値を提供できるかを考え、様々なデータを蓄積しています。しかし楽天だけですべての情報を網羅できるわけではありません。そこで現在、オフラインでも新たなデータを蓄積するために様々なパートナー様と取り組みを進め、ビジネスを作っています。

 

 

楽天の広告ビジネスとは

 Eコマース事業である「楽天市場」からスタートした楽天ですが、現在は「楽天ポイントカード」の加盟店様と連携したオフラインなども、ユーザーとのタッチポイントに加わっています。最近の事例としては、東急様とジョイントベンチャーを作り、オフラインのサイネージや購買データを連携させ、一部お客様とのリレーションを作っていける状況を模索しています。

 私たちは、ファーストパーティーとして多くのデータを蓄積しています。そのデータには、ユーザーに許諾を得た消費行動データや、「楽天カード」や「楽天銀行」などで認証済みのユーザーデータも含まれます。それらのデータは、ファーストパーティーとしてのカスタマーリレーションの発展という側面もあるのですが、タッチポイントとして広告にも活用できるものです。

 楽天のデータを活用すると、ユーザーの生活行動やプロパティ情報を分析できますので、皆様と一緒にどのようにしてユーザーにUXを提供するのかという視点から、「楽天市場」以外でも、楽天ならではのサービスを開発しています。

 

事例:保険事業者様

 

 たとえば、保険関連の事業者様においては、楽天が蓄積するユーザー情報だけではなく、インターネットリサーチ会社である「楽天インサイト」の情報も加えたデータに基づき、広告の配信と拡張などを行っています。重要なポイントとしては、ユーザーが楽天IDでログインした状態から蓄積した情報がベースになっているため、IDに基づいた形でユーザーを可視化できている点です。他社においては、統計に基づき推理した推計データや拡張データを基に可視化するケースが多いと推測されるため、この違いは非常に大きいと考えています。

 医薬部外品を取り扱う製薬メーカー様においては、販促活動を通してユーザーを明確に可視化し、その後にユーザーを拡張、もしくはユーザーから許諾を得てエンゲージメントを取りながら継続的に商品を使っていただくような施策を、「楽天ポイント」を活用して行う施策を実施しています。

 楽天の広告ビジネスにおいては、必ずしも「楽天市場」に出店する必要はなく、皆様に楽天のデータを様々な形で提供可能であり、さらにユーザーに「楽天ポイント」を提供することで、代わりにデータ取得の許諾を得ることもできるのです。

 

 

楽天IDを使ったマーケティングの強み

 

楽天広告3つの提供価値

 

 皆様のビジネスにおいて重要なのは、いかにユーザーをつなげていくかという点だと思います。その施策として、オウンドメディアを駆使しファーストパーティーとしてユーザーをつなげていきたいと考えている広告主様もいらっしゃるでしょう。しかしその施策では、潜在層にアプローチしづらいという問題と、既存のペルソナ像にしか販促ができないという問題が生じます。加えてサードパーティーCookie規制など、従来のマーケティング手法が使いづらくなってきている昨今、どのような形でビジネスを行っていくかという課題もあります。

 楽天はプラットフォーマーでもありますが、皆様が抱える「ターゲットを可視化できない」という問題を解決する広告ビジネスも行っています。「楽天市場」にご出店いただかなくても、キャンペーンなどのランディングページを作っていただければ、ファーストパーティーとしてユーザーのデータをつなげることも、「楽天ポイント」を提供してユーザーの許諾を得ることもできるのです。

 他にも、様々な形で広告や宣伝、販促支援などのPDCA をご支援できると考えています。事業モデルにあわせて、ポータルサイトやコマースサイトにランディングページなどを保有していただければ、コンテンツを提供し、そのコンテンツからAIエージェントである「Rakuten AIris」にデータを連携できます。

 オフラインのデータにおいても、「楽天ポイントカード」の加盟店様のドラッグストア、スーパー、デパートなどと、店舗様のPOSと私たちのデータを一部活用するビジネスを行なっています。そのデータはユーザーの許諾なしには、ロケーションデータやクーポンなどの広告配信にそのまま活用することはできないのですが、私たちは、ユーザーに「楽天ポイント」を提供することで、多くのユーザーから許諾を得ています。

 楽天の場合、多くのユーザーが楽天IDをベースに、「楽天エコシステム」の中で様々なタッチポイントを持っているため、そこに皆様の連携ポイントを作り、「Rakuten AIris」に基づき広告の配信や拡張を行えますし、外部広告とのデータ連携も可能です。さらに今後は、新たに加わった「楽天モバイル」というユーザーコンテンツも駆使して、皆様のビジネスを作っていきたいと考えています。

 

 

楽天だからできる施策

 

楽天が可能にする大きな変化

 

 今までも、「楽天市場」にご出店いただいている事業者様には多様な形で広告を提供してきたのですが、今年9月にリリースした「RMP - Sales Expansion」は、メーカー企業様が「楽天市場」の検索結果画面に運用型広告を配信できる広告プロダクトです。関連性が高いキーワードの検索結果に広告を表示することで、見込み顧客に効率的にアプローチすることができます。

 購買リフトにおいても、楽天IDでオンラインとオフラインのデータを結合して測定できます。他社の場合は推計的にページビューの変化などからデータを拡張しますが、私たちの強みは、楽天IDでユーザーの明確な購買データを得られるため、より正確なデータをご提供できることです。

 さらに今後は、オムニコマースなどの様々なオフラインのタッチポイントも、今後さらに増やす予定です。

 「Super Point Screen(スーパーポイントスクリーン)」は、その一つです。2020年9月時点で月間アクティブユーザー数は200万を突破しています。ユーザーがアプリをダウンロードすると、Android であればロック画面 、iOS であれば通知経由で、広告を見るなどのアクションに応じて「楽天ポイント」を提供しています。ユーザーから許諾を得たロケーションデータは、広告配信にも利用できます。

 レシートデータをユーザーからお預かりする「Rakuten Pasha」というサービスもあります。こちらは、毎日更新されるクーポンを取得し、オフラインで該当商品を購入してからレシートを撮影して送付すると、「楽天ポイント」を獲得できるというものです。2020年6月時点で月間500万枚以上のレシートをお預かりしており、オフラインにおけるユーザーの購買行動の分析が可能となっています。こちらの分析データも、ユーザーの許諾に基づき広告配信に利用することが可能です。

 また既存のビジネス以外の取り組みも進めています。ゲーミング事業やアプリなどの活動も支援することも可能になりました。

 「アプリを作ったものの、なかなかユーザーに利用していただけない」。そのような悩みも、楽天のSDKを活用したり、ユーザーのアクションに対して「楽天ポイント」を提供したりすることで解決します。さらに「楽天ポイント」は楽天IDに基づいているため、ユーザーの利用許諾を得ていれば、皆様に楽天ID経由で蓄積したデータの分析結果を開示することも、広告に利用することもできるのです。

 

 

楽天IDを使った楽天流IDマーケティング

 楽天は、多種多様な皆様の事業と、楽天IDを通して連携をしていきたいと考えています。

 今後、データを活用するにはユーザーに利用方法や手段を明確に明示し、許諾を得ることが必須となるでしょう。その許諾をどのようにして取るのかという点が、今後数年間、課題になるのではないでしょうか。私たちはそこを一つのキーポイントとして、皆様と一緒にウェブサイトやアプリなどのオンラインだけではなくオフラインでも、ユーザーとのタッチポイントをつくっていけると考えています。

 デジタルマーケティング業界は変革期を迎えていますが、楽天は2019年連結で1123億円、広告ビジネスとして展開をさせて頂いております。コロナ禍で広告ビジネスが伸び悩んでいる今年度においても、多くの広告主様にご協力頂き、第2クォーター(4~6月)で13%以上成長しています。

 「楽天市場」に出店する以外にもデータのつなぎ方がありますし、オンラインだけではなくオフラインでも、ユーザーとつなぐことが可能です。私たちはマーケットの変化に合わせて、皆様と一緒に新しい商品を作っていきたいと考えていますので、楽天には楽天流IDマーケティングがあることを是非ご承知いただければと思います。

 

『生活者』ファースト時代の楽天流IDマーケティング

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。