楽天は、「楽天市場」をはじめ最近では通信事業や日本郵政様と資本提携をさせていただくなど多様な事業を展開し、広告ビジネスにおいても様々な取り組みを行っております。
デジタル広告分野においては多くの媒体社がありますが、楽天が他社と異なるのは、スタートが広告ビジネスではないことです。そのため当社は、事業として楽天IDを起点とした様々なデータを蓄積し、楽天のドメインで数多くのユーザーとのタッチポイントやインベントリーを持っています。これが楽天の広告ビジネスの大きな特徴です。
楽天は、「楽天市場」をはじめ最近では通信事業や日本郵政様と資本提携をさせていただくなど多様な事業を展開し、広告ビジネスにおいても様々な取り組みを行っております。
デジタル広告分野においては多くの媒体社がありますが、楽天が他社と異なるのは、スタートが広告ビジネスではないことです。そのため当社は、事業として楽天IDを起点とした様々なデータを蓄積し、楽天のドメインで数多くのユーザーとのタッチポイントやインベントリーを持っています。これが楽天の広告ビジネスの大きな特徴です。
ヨーロッパでGDPR(一般データ保護規則)が施行されて以降、世界的に個人データの活用に対する制約が厳しくなってきました。広く告げる「広告」に対して、インターネット広告の特徴は「狭告」、狭く告げる、つまりターゲットにピンポイントに届けるという点です。そしてその「狭告」を実現するために、これまではCookieを利用したリターゲティングやリマーケティングが行われてきました。しかし今後は、そのような刈り取り型のターゲティング手段の大半は使えなくなり、日本においても、恐らく個人情報保護法が今後改正され、非常に厳しい対応になっていくと予想されます。
サードパーティCookie規制という観点で考えると、今後、データを蓄積している企業が生存していくうえで重要になるのはIDです。楽天は日本国内で1億以上の会員とそのユーザーIDに基づき、「Rakuten Marketing Platform」という名称で、すでに様々なタッチポイントとソリューションを提供しています。
脱Cookie時代におけるポイントは、「許諾を得ていないユーザーのデータは使わない」ということです。つまりユーザーのデータを使用するには、利用することと、その利用方法を明示しなければなりません。ウェブサイト訪問時や、アプリをダウンロードしたタイミングで、明確にかつ詳細に明示した上で許諾を得る必要があるのです。それは非常に困難なことです。しかし当社は1億以上の楽天IDがあり、多くのユーザーから広義の広告の許諾を得ています。加えて、当社は「楽天ポイント」の提供も可能です。例えば、ユーザーは自分のデータを提供すると許諾することで、広告やクーポンだけではなく、「楽天ポイント」を受け取ることができるのです。この点も、今後広告ビジネスを展開していく際、楽天が優位性を保てる要素です。
楽天IDに基づくデータは、例えば「楽天市場」を利用いただく際には、お買い物のプロセスの中で、決済情報から商品発送に使用する住所などが必要となるため、正確で精度が高いデータが蓄積されます。IDを保有している企業は他にもありますが、個人認証を取っていないIDが多く、データの正確性においては当社が抜きん出ていると考えています。楽天IDが持つデータの正確さと精度。これは広告事業を行う上で、当社が持つ大きなアドバンテージになり得るものと考えています。
当社の広告ビジネスの特徴は、従来のリーチ型のマーケティング手段ではなく、多くのタッチポイントにおける購買を起点とし、ユーザー像を捉えられることです。つまり、ユーザーが実際に何を買い、そのユーザーがどんな人なのか、明確に可視化できるということです。
また、例えば検索エンジンとソーシャルネットワーク、ポータルサイトでは、それぞれカバーしている範囲が異なります。当社は楽天IDを起点に、これら全ての範囲を網羅する可能性を多分に持っていると考えています。事業を起点に始まった会社だからこそ蓄積できた様々なデータやユーザーとのリレーションを、広告ビジネスにも活用できるからです。
コロナ禍において、以前はオフラインでスタートしていたマーチャンタイズが、EC起点にスライドしています。「楽天市場」においても、メーカー直営店舗が非常に増えました。リアル店舗で販売する際は、競合他社の製品よりも目立たなくてはならず、棚の問題なども生じますが、オンラインの場合はそのオンライン上で情報を伝えられるという利点があります。しかしターゲットを絞り込んだ情報伝達は、テレビCMに代表される従来のマス型では難しく、ある程度デジタルが進んだ後も、購買へと十分に紐付けるまでは至っていませんでした。ところが近年、花王様が「スモールマス」の考え方を提唱されているように、購買データを起点にしっかりとPDCA を回しながら商品開発へ繋げたり、プロモーションを行ったりということが可能になりました。「楽天市場」においても、EC独自のラベルレス商品や、スモールマスからさらに進んだパーソナライズド商品を出されたメーカー様もいらっしゃいます。
このような変化を受け、ECサイトの役割も徐々に変わりつつあります。商品を知るため、商品の情報を集めるためには、メーカーサイトや比較サイトよりもECサイトを活用するユーザーが多いという、調査報告もあります。つまりECサイト自体がメディアになってきているといえるでしょう。「楽天市場」にご出店いただく、もしくはいわゆるランディングページを「楽天市場」に持っていただく、もしくは楽天ドメイン内にページを持っていただければ、楽天というファーストパーティの中で、ユーザーのデータを繋ぐことが可能になります。さらにブランド様であれば、JANコードと紐付けることで、どの店舗で、どのようなユーザーが買ったかということも見える化できます。当社では、今までメーカー様が蓄積し得なかったデータを、「楽天市場」を通してデータ化することが可能なのです。
オフラインにおいても購買を起点にして、プロモーションがどのようにして購買に繋がったのか、なぜ繋がらなかったのか、効果測定が可能です。楽天IDを通してオンラインとオフラインのデータを接続できるため、O2O、OMO、オムニチャネルなど、様々な施策でユーザーをデジタル化し、見える化できるためです。
たとえば楽天のメディアを活用した取り組みでは、「楽天レシピ」をユーザーとのタッチポイントとしたケースがあります。実店舗様と連携し、今までは新聞に入っていた紙のチラシを、「楽天レシピ」内でデジタルクーポンやデジタルフライヤーとしました。「楽天レシピ」はレシピサイトですので、必要な情報を必要な対象に対して伝えられます。さらに楽天IDを起点に、どのような属性のユーザーが、何を見て、最終的にどのように買ったかを測ることも可能です。
アウトサイドのサイネージに関しても、当社ではビーコンや二次元バーコードを使うことで、ユーザーを捕捉できます。そしてリアル店舗を訪問したユーザーに対しては、ロケーションデータと楽天IDを紐付けることで、電子パネルなどを通して一人ひとりのユーザーに最適な情報を提供できます。これらの施策をパーツパーツで行っている会社は多数ありますが、当社の特徴は、楽天IDを起点に全体を一連の流れで、かつ明確に測定することが可能になるという点です。
オフラインのデータも購買データが起点になっています。「楽天ポイントカード」の加盟店である飲食店様や流通様のID-POSと連携させて頂き、商品を購入したユーザーに「楽天ポイント」が提供されたタイミングで、楽天IDからユーザーの測定が可能です。また、広告ビジネスへの利用許諾をユーザーから得ている「Rakuten Pasha」というサービスもあります。ユーザーが毎日更新されるクーポンを獲得し、オフラインで該当商品を購入してからレシートを撮影して送付すると、「楽天ポイント」を獲得できるというものです。2021年3月時点で月間800万枚以上のレシートが送られてきているため、ある一定のエリアに関しては、併売傾向なども含めた明確なユーザーのデータを、クライアント様にフィードバックできています。
4月20日にリリースした、オフラインでの購買データに基づくIDマーケティングソリューション「RMP - Omni Commerce」における新メニュー「Instore Tracking」では、オンライン広告の効果を、実店舗購買に基づいて計測することができます。「楽天ポイントカード」に加盟している実店舗などの消費行動分析データ、または前述の「Rakuten Pasha」を通じてユーザーが送付したレシートデータを分析に活用できます。従来のマスマーケティングには、実際にどれだけのお客様が広告を見て購入に至ったのかが見えづらいという課題がありました。「Instore Tracking」を導入すれば、実店舗での購買実績に基づき、オンライン広告の効果を測定したり、商品の購買層の特性を把握し広告の配信先やクリエイティブの改善につなげたりすることが可能になります。
また当社には楽天IDを基に精度の高い拡張配信が可能なAIエージェント「Rakuten AIris」や、オンオフ双方の購買を起点に、確度の高いプロモーションの事後リサーチが可能な「楽天インサイト」というリサーチパネルもあります。楽天はこれらの様々なサービスを提供することで、オンラインとオフラインを一つの世界に繋げていきます。
政府から、銀行の業務領域における広告業を解禁するという指針が出ました。しかし銀行も広告ビジネスを手がけることを前提に業務を行ってきていませんし、そもそも蓄積しているデータは銀行に関連する情報のみです。また蓄積しているデータを広告業に活用するためには、ユーザーの許諾を得る必要があります。当社の「楽天銀行」も1000万以上の口座を開設していただいていますので、広告業が解禁になれば、他行と同様にそのデータを活用可能です。異なる点は、当社には口座に紐付けられる楽天IDがあること。そして「楽天ポイント」を使用して、ユーザーから許諾を取りやすい環境がすでに整っていることです。
また通信キャリア事業者となることで、広告を起点に考えた場合、非常に多くのマーケティングボットが使われているものの当社が蓄積していなかった、ゲーム業界のデータを蓄積することができるようになります。
当社に対して、あまり広告ビジネスというイメージは浸透していないかもしれませんが、このように、楽天IDはオンラインのコマース事業だけでなくオフラインまで繋がり、さらには金融関連やモバイル事業まで、「楽天エコシステム」の中で繋がっています。サードパーティCookieが規制されインベントリーホルダーとの連係が困難になっても、当社は楽天IDと「楽天ポイント」を通じて、多種多様な事業において購買起点のIDマーケティングが可能です。
本日は購買を起点としたメーカー様を中心にした内容になりましたが、一般的なDSPやダイレクトメールなど、「Rakuten Marketing Platform」として多様な広告ソリューションを有しております。他の事業社様においても、楽天は「楽天市場」に出店するだけでなくプラットフォームとして活用できると、認知していただけると幸いです。コロナ禍の厳しい環境下ではありますが今後も新たなチャレンジを行いつつ、「Walk Together」(共に歩む)のスローガンの下、皆様と一緒に歩んでいきたいと思います。
1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。