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楽天が提案する、脱Cookie時代における
IDマーケティング・広告戦略と最新動向【前編】


楽天グループ株式会社 執行役員
紺野 俊介

 

 

 本日は、楽天がどのような考えで広告ビジネスを行っているかについて、お伝えさせていただきます。

 最近ニュースなどでも取り上げられていますが、GDPR(EU一般データ保護規則)という法律が施行されるなど、グローバルでCookieの利用に制限が課せられるようになってきています。

 

CookieからIDへ

 普段インターネットを利用している時、広告がどこにあるか、あまり気にされていないかもしれませんが、大変多くの広告主様がインターネットの面を活用して広告ビジネスを行い、ユーザーの皆さんに情報を伝えています。

 その核になるのがCookieです。ユーザーが検索したキーワードや訪問したWebサイトに紐付いた情報によって、広告が配信されているのです。

 ところが、今後は非常にやりづらい環境になっていくと、言われています。PCだけではなくスマートフォン関連でも、これまでのようにユーザーのデータを使うことが、非常に難しい環境になっていくと思われます。

 日本の総広告費に占めるインターネット広告費の割合は30%を超え、多くの広告主様が利用し、多くのユーザーがその広告を接点に商品を購入したり、何かしらのアクションにつなげたりしています。

 特にWebサイトやアプリ、動画内などに配信されるディスプレイ広告と呼ばれる広告の多くが、Cookieの規制が始まったことにより、制約を受けるようになるというのが現状の認識です。

 つまり広告主様にとっては、これまで可能だった広告配信の方法が問われるタイミング。メディアの方たちにとっては、今まで得ていた収入が得られなくなるタイミング。ユーザーにとっては、そのような環境下に置かれていたことを知るタイミング、といえるかもしれません。

 Windows95の登場で、多くの方がインターネットを使うようになりました。以来20年以上、Cookieを核とした様々な広告配信で多くのメディアが得ていた収益、その広告によりユーザーが得ていた行動体験が、このタイミングで崩れていくのではないかと考えています。

 ただCookieは使えなくなるわけではありません。ユーザーに対して「あなたのデータを、このように使っても良いですか?」と許諾を求めた上で、同意を得られれば使っても問題はありません。とはいえ、今までとは異なり、非常に使いづらい世になりつつあるといえるでしょう。

 このような現状下、私たち楽天をはじめ、多くのコマース関連のビジネスをしている会社、もしくはユーザーとの接点を持つ会社が、広告ビジネスに取り組んでいます。

 

 

脱Cookie時代における楽天の強み

 

脱Cookie時代における楽天の強み

 

 楽天は、1億以上の楽天会員とその「楽天ID」に基づいて様々なデータを蓄積しています。「楽天エコシステム(経済圏)」の中でユーザーに対して適切な情報を伝えていくために、ユーザーの同意を得たうえで、その消費行動分析データを広告配信に使わせていただいています。

 さらに一歩踏み込んだデータ。例えばロケーションデータやオフラインにおける購買データについては、必要に応じて、例えばユーザーに「楽天ポイント」を提供する代わりにデータを使わせていただくというような形で、別途許諾を得て利用させていただいています。

 また外部のメディアに対しても、CookieベースではなくIDに基づいた形でターゲット可能な広告配信の仕組みを整えています。

 「楽天ID」に基づくユーザーデータは、「楽天市場」や「楽天トラベル」、フィンテックサービスなどの利用に際してユーザーが登録する情報になります。つまり、個人認証が取れているIDであることが、大きなポイントです。

 さらに当社には、先ほど申し上げたように、「楽天ポイント」を提供する代わりにユーザーから許諾をいただく、というモデルがあります。

 この強みを活用し、これまで多くの広告主様や代理店様が多様な形で行っていたマーケティングを、楽天が持つプラットフォームと「楽天ID」を活用して実現していこうというのが、楽天が広告ビジネスを展開している理由です。

 

 

 

広告ビジネスの具体例

 楽天は「楽天市場」や「楽天トラベル」などを中心に、様々なユーザーとのタッチポイントを持っているため、そのタッチポイントを活用して認知獲得・販売促進が可能です。

 多くの事業者の方がオウンドメディアを持ち、自社のデータを蓄積されていると思います。そのデータと楽天が蓄積するデータを結びつける方法はありますが、その際は再度ユーザーからの許諾が必要になります。また、楽天が蓄積しているデータを、そのままの形でご提供することも、ポリシー上不可能です。

 では、楽天のデータをどのように利用できるかというと、「楽天市場」の中に店舗を出店いただいていれば、データを連携させることが可能です。

 店舗を出店されていないメーカー企業様でも、「楽天市場」の中にブランドサイトを設置いただければ、データを連携させることができます。自社の直営店内の広告から「楽天市場」内のブランドサイトに飛ばしたり、「楽天市場」内の検索結果などにデータを繋いで、PDCAサイクルを回したりすることもできるようになります。

 また、「楽天ID」に基づく正確かつ多種多様なデータを活用して、ブランドサイトを訪れたユーザーの、精度の高いペルソナを作ることもできます。このペルソナは、マーケティングや次の商品企画に活用することもできますし、弊社以外でのマーケティング活動に使っていただいても問題ありません。

 楽天は後述するオフラインのデータも含め、IDに基づいた様々な情報から、どのようにして商品の購入につながったのか、もしくはつながらなかったのか、ということを分析できます。

 この点が、他のビジネスやメディアとの違いです。例として「楽天市場」を中心にメーカー企業の広告主様を出しましたが、他の業態でも様々な形で展開が可能です。

 ファーストパーティー以外は、そのデータに基づいた広告配信ができなくなりつつある状況下で、楽天の強みは、「楽天市場」だけでなく、「楽天エコシステム」の中でアセットを活用できるというのが大きなポイントです。

 私たちは購買というデータを起点に、広告的な用語でいうとデータを拡張することによって、みなさまのビジネスのユーザーのタッチポイントを増やしていくことを行わせていただきます。

 拡張した後に、楽天はその拡張したデータを、そのまま広告配信としてダイレクトメールやEメールなどで利用することが可能です。

 Eメールは効果が薄いのではないかと思われるかもしれませんが、楽天の場合は精度の高いユーザーデモグラフィックデータを利用し、さらにオンラインを多用している方に対するセグメントが可能です。

 ご存じの通り、楽天には利用量に応じた会員ランクという仕組みがあります。中でも上位ランクである「ダイヤモンド会員」や「プラチナ会員」の方たちは、オンラインで多くの消費行動を行われている方たちです。この方たちに対してEメールやダイレクトメールを配信することで、様々な効果が測れます。

 それぞれのユーザーに対してデータに基づいた配信ができるため効果が大きく、多くの広告主様にご利用いただいています。

 


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紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。