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楽天が提案する、脱Cookie時代における
IDマーケティング・広告戦略と最新動向【後編】


楽天グループ株式会社 執行役員
紺野 俊介

 

 


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オンラインであたりまえの計測が、オフラインでできるように

 

最重要の変換点

 

 様々なビジネスがオンラインで行われているものの、未だに大多数の消費活動はオフラインで行われています。そのため多くの企業がオフラインにおいて販促活動をしているわけですが、「なぜ購買に至ったか」「どこで購入したか」「どのようにして商品を知ったか」ということを把握するのは困難です。

 O2OやOMO、オムニチャネルという言葉が流行していますが、実際にそれを実現する術がないというのが、多くの広告主様が抱えている悩みではないでしょうか。

 なぜそこで楽天かというと、私たちには様々なタッチポイントがあり、そこでは「楽天ポイント」をフックとして、ユーザーに許諾を得るスキームが利用できるからです。

 コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストア、外食チェーン、多様なパートナー様と連携することで、ユーザーに対して「楽天ポイント」を提供し、代わりにデータを使わせていただき最適化を図るということを実現しています。

 直近の例では、東急様との連携により東急様が蓄積する様々なデータと、私たちの「楽天ID」を結びつけることにより、デジタルサイネージと接触したユーザーが、実際に商品を購入したのか、どの程度ブランドイメージが上がったのかなど、従来は一部の調査等でしか測れなかったものを、「楽天ID」を起点に測る試みも行う予定です。

 また「楽天ポイント」を提供する代わりに、ユーザーからレシートを提供していただく「Rakuten Pasha」というサービスもあります。

 ただ落ちているレシートを集めても何も活用できないのですが、「Rakuten Pasha」を通して届くレシートは貴重な情報となります。

 レシートの代わりにユーザーに提供する「楽天ポイント」は、「楽天ID」に基づいています。つまり「楽天ID」を持つユーザーのオフラインにおける消費行動を、レシートを起点に追わせていただくことができるのです。

 結果、どのようなことが可能になったかというと、レシートには日時が印字されているため、いつどのような商品を買っているユーザーが多いかなどということを、時系列で追うことができます。そのデータを利用して、コンビニやドラッグストア、メーカー様と連携しつつ、販促キャンペーンなどを行ったりしています。

 「楽天ID」と楽天のアプリを通して行えるサービスですので、従来と比較すると労力や時間などを削減でき、さらに流通様を巻き込んで地域や店舗を限定するなど、自由度が高い施策が可能になりました。

 2020年6月時点で月間500万枚以上のレシートデータを蓄積していますが、将来的には月間1千万、数千万枚というレシートデータを蓄積できればと思っています。

 リアルな販促においても「楽天ID」ならびに、流通のみなさま、メーカーの方々と一緒に行わせていただくことが、実現可能になってきています。

 

 

オン・オフ統合の進展

 

オン・オフ統合の進展

 

 昨今弊社が非常に力を入れている「楽天モバイル」。2020年6月時点で携帯キャリアサービスとしての累計契約申し込み数が100万回線を突破しました。

 今後、さらに申し込み数が伸びていくことで、多くの可処分時間やタッチポイントを得ることができます。

 楽天にはオンラインにおけるタッチポイントとして「楽天市場」や「楽天トラベル」があり、かつ「楽天ID」は、オフラインを含めた「楽天エコシステム(経済圏)」全体をカバーしています。

 私たちが保有する様々なメディアに、新たなタッチポイントを作っていただければ、それらのデータをつながせていただくことが可能であり、新たなデータが必要な際も、ユーザーの許諾が得やすくなります。

 今までオンラインとオフラインをつなげることが難しかった理由は、やはりIDでつながっていなかったからだと思います。冒頭お伝えしたCookieも、残念ながらオンラインとオフラインをつなぐことはできませんでした。

 先ほども申し上げた通り、現在もまだ購買活動の大半がオフラインで起きています。私たちは、オンラインで蓄積しているデータと「楽天ID」を起点に、ユーザーに対してどのような価値を提供すればUXが上がるのか、メーカー様をはじめ様々な広告主様とより強固に連携できるのか、ということを考えたビジネスを実現しようとしています。

 お伝えしたように、すでに広告商品はできあがりつつあります。本日はメーカー様を中心とした内容になりましたが、人材や不動産など、様々な広告主様でも活用できる仕組みを作っています。

 オンラインとオフラインのアプローチについては、それぞれでユーザータッチポイントを作りEコマース・オフライン間の購買データをつなげるという施策を行ったり、町中で不特定多数を対象に行っていた新商品販売時のサンプリングを、特定の場所で特定の人をターゲットに行ったり、というようなことを始めています。

 自らがファーストパーティーとしてデータを蓄積するという選択肢もあるかと思いますが、データの共有などが難しい状況になってきていますので、自分たちとつながらない層のデータと連結するのは非常に困難です。

 私たち楽天は、代理店のように外部の媒体を楽天のデータと結びつけることも可能ですし、プラットフォーマーとしても、「楽天市場」の中にご出店いただいたり、ページを設置していただいたりすることが可能です。

 オウンドメディアにユーザーを集めたい際は、楽天のアセットやインベントリーを活用・提供するプラットフォーマー、メディアとしての立ち位置にもなれます。

 さらには本日お伝えしたアドソリューションやテクノロジーであったり、アプリを通してみなさまの事業をサポートしたりする、ということも行っています。

 金融系に関しては一部競合関連で取り扱えない事業もあったりしますが、様々な事業者様と取引可能です。多くの広告主様と、本日お伝えしたオンラインとオフラインの施策を通して、これまで見えなかったユーザーを見える化するということに、共に取り組ませていただければと考えています。

 楽天は「楽天市場」や「楽天トラベル」を中心としたB2Cモデルのイメージが強いと思いますが、みなさまとパートナーシップを組んでB2Bにおいても、まずは日本で、同時にグローバルでもプラットフォームとして共通基盤を作りながら、みなさまと一緒にビジネスを作っていきたいと考えています。

 

オン・オフ統合の進展

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。