ネット広告が抱える問題点
大月氏:2018年の日本のネット広告費は約1.76兆円。前年比で116.5%となり、今、非常に伸びている領域です。
最近はネット広告の問題点に焦点を当てた番組が放送されています。番組内で取り上げられたアドフラウド問題などに関して、番組が放送されてから社内で何か変化はありましたか?
中川氏:私の部署はお客様にサービスを提供する以外に、グループ企業のマーケティング支援をしています。様々な広告を取り扱うため多くの方と関わるのですが、実際に広告を扱っている私たちからすると、昔からよくある話ですのでそこまで大きなショックは受けませんでした。
しかしクライアント側では、広告に携わらない部署から広告関係部署に対して「大丈夫なのか?」という声もあり、ニュースを見た上層部からも、自社の状況に関する確認があったようです。
紺野:今回番組で取り上げられたことによって一般化され、世間に影響が出るようになったということだと思います。ただ実際は、小規模にDSP(Demand Side Platform)やSSP(Supply Side Platform)を使って行われていることで、メジャープレイヤーにはあまり影響はなかったと思います。アルゴリズムの低下などはありましたが。
楽天グループはアフィリエイト領域ではASP(Affiliate Service Provider)を運営しており、独自のアフィリエイトサービスがあります。また広告事業以外にも楽天のブランドを守るためのブランドチームもあるため、従来よりもさらに連携を密にして安全性を確認しています。
そのうえで第三者が提供するブラックリストだけではなく、各事業が持っているブラックリストを共有するなど、改めて漏れがないかを確認しています。特にASPの場合は疑似ASPのような自分たちで制御できないものもありますし、今回の件をきっかけに全社で再度徹底的な確認を行う必要性を感じています。
何が安全かという基準はさておき、万全の管理が行われなければ、思わぬところに広告は出てしまいます。その結果、ブランド毀損が起きるリスクもあります。
テレビCMや新聞広告を出された際は、どこに自社の広告が出ているか認識されているはずです。ネット広告でも代理店などに一任したり媒体のシステムを全て信頼したりするのではなく、出稿主側も自分たちが管理している広告にしっかりと向き合うことが必要だと思っています。