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パネルディスカッション
新時代のEコマースプラットフォーム【前編】


Septeni Japan株式会社 第4アカウント本部 コマースアクティベーション部 ゼネラルマネージャー
玉石 和正 氏

株式会社bolome 代表取締役
水野 裕哉 氏

株式会社トレンドExpress 代表取締役社長CEO
濱野 智成 氏

株式会社電通デジタル エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部 WEBプロデューサー
東條 周子 氏

株式会社 Mizkan Holdings(株式会社 ZENB JAPAN) 新規事業開発、ダイレクト戦略チーム
ミラーナ イレーネ 氏

楽天株式会社 執行役員
紺野 俊介

 

「Eコマースプラットフォーム=大手ECサイト」?

玉石氏:本セッションは「新時代のEコマースプラットフォーム」というテーマで、異なるバックグラウンドからEコマースに関わられている登壇者の方々に、縦横無尽に語っていただきます。

まず、業界一般的に「Eコマースプラットフォーム」とは「大手ECサイト」を指すことになっているのでは?というのが、一つの課題提起です。もちろん様々な考え方があると思いますが、本日のテーマを語る上で、会場の方々ともEコマースプラットフォームの解釈を一つにしてから始めたいと思います。東條さんご説明いただいてよろしいでしょうか。

東條氏:「Eコマースプラットフォーム=大手ECサイト」。確かにそのとおりですが、最近デジタルコマースを取り巻く状況が変化してきている中で、本当にそれだけで良いのかと感じている方もいらっしゃるかと思います。

スマートフォンの登場により、会社や自宅のパソコンの前に限定されていたデジタルショッピングが、24時間365日手元で可能になりました。寝る前のちょっとした時間や電車に乗っている時など、いわゆる「スキマ時間」にECサイトでショッピングが楽しめるようになったのです。「楽天市場」のセールイベント「楽天スーパーSALE」が始まると、より多くの方々がプラットフォームを利用するようになり、Eコマースは身近なものになりました。

玉石氏:東條さんは長らくEコマースの業界に身を置かれていると思うのですが、実務の内容も変化してきましたか?

東條:「楽天スーパーSALE」が始まった頃から、それまでは明確にしづらかった年間計画におけるPDCAが回しやすくなり、リズムができてきたように思います。

さらにその後スマートフォンが広く普及しSNSが一気に浸透したことで、「多様な商品を安く早く提供する」という従来のEコマースの課題が、「消費者の生活を良くするモノを、いかに心地よく提案していくか」に変化したと感じています。

玉石氏:紺野さんにお伺いしたいのですが、この1年の間にもメーカーさんからの期待値や向き合い方に変化を感じますか?

紺野:自社のオウンドメディアから、楽天を含めたEコマースプラットフォーム側に事業の軸足を移す企業さんが増えています。百貨店で買い物をする時と、ドラッグストアやスーパーで買い物をする時とではその目的が異なるように、オンラインでも棲み分けができつつあると思います。デジタル上での消費行動は今後も間違いなく増えていくだろうと感じています。

玉石氏:東條さん、消費者側の考え方の変化は感じますか?

東條氏:消費者側も、デジタルに接触する時間が増えたことにより情報取得方法に変化があったと思います。インターネットとスマートフォンという検索環境が整い、自分が欲しいタイミングで何でも検索ができるようになりました。ただのその一方で、情報過多により情報を見るのが面倒に感じたり、選択肢が多すぎて何を選んで良いか分からなくなったりする消費者も出てきました。

その結果、自分の信頼できるモノをおすすめしてくれるメディアを信頼・重視するようになり、消費者主導の時代になったといわれています。

 

 

より良い顧客体験を提供するための自社ECサイト

玉石氏:続いてメーカー様のリアルな実情に切り込んでいきたいと思います。まずミラーナさんにお伺いします。メーカーとしてEコマースにどのような形で向き合われているのでしょうか?

ミラーナ氏:弊社は株式会社ZENB JAPANという、株式会社Mizkan Holdingsのグループ会社です。ミツカンは1804年(江戸時代)に創業した食酢や味ぽんなどを扱う総合食品メーカーで、もともとは捨てられていた酒粕の有用性を見いだして再利用した粕酢から始まりました。

ZENBのコンセプトも同じです。普段捨ててしまっている皮や芯などを含め、野菜をまるごとスティックやペーストにして、おいしく食べていただくというブランドです。今は自社ECサイトでのみ販売していますので、恐らくあまり広く認知されていないと思います。

玉石氏:フィロソフィーが継承されているのが興味深いですね。一方で、なぜ大手ECサイトを使わないという選択をされたのでしょうか?

ミラーナ氏:食品メーカーのマーケティングが完了するのは、お客様に食べていただいた時だと考えているからです。大手Eコマースプラットフォームやスーパーで販売する場合、出荷後の動きを自分たちでフォローすることができません。私たちが望む顧客体験をしていただくために、自分たちでお客様の動きを把握できる自社ECサイトのみで販売することにしました。

紺野:ミツカンさんという確立されたブランドで、さらに自分たちが目指す層へのエンゲージメントもありコミュニケーションがとれているなら、必ずしも大手Eコマースプラットフォームを活用する必要はないと思います。

その一方でEコマースプラットフォームにはメンバーシップがあり、楽天でいうと、IDを通じて国内で1億以上の会員とつながることができるというメリットもあります。

 

 

Eコマース先進国中国の「人」を軸としたEコマース

玉石氏:日本国内のEコマースは、今もまだ多くの課題を抱えている状況だと思います。他方、Eコマース先進国だといわれているお隣の中国はどのような状況なのか、水野さん、教えていただけますでしょうか?

水野氏:中国のEコマースの先進性について、2つトピックスをご紹介します。

まず一つ目、「『人』を軸としたEコマース」についてです。日本でいうインフルエンサーは中国でKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれ、様々なプラットフォームがそのKOLを軸としてシームレスにつながっています。

また、SNSとECサイトとのAPIでのつなぎ込みが進んでいます。SNS内でECサイトの商品情報を閲覧できるうえ、カードで直接購入できるようなUXも実現されています。

動画のアプリとEコマースも非常に融合が進んでいます。動画アプリ内で、動画視聴から商品購入までを外部リンクや各プラットフォーム内の店舗からできるようにUXが実現されています。

このような点が全般的に日本と比べると進んでいると考えています。

玉石氏:「人」を軸にして各プラットフォームがシームレスにつながっているというのは、新時代感があり面白いと思うのですが、中国で早期に市民権を得た理由は何かあるのでしょうか?

水野氏:2つあると思っています。1つは国民性です。中国の方は日本人と比べると、企業や広告を信用せず、身近な友だちや口コミなどを信じる文化があります。そのためECサイトに出店している名前も知らない会社の店舗から商品を購入するよりも、信用できる身近な存在であるKOLの店舗を好むのです。

2つ目は、コミュニティーです。例として、化粧品のD2Cを行っている中国のユニコーン企業のコミュニティーを挙げます。いま中国では世界的なブランドと肩を並べるほど人気がある会社です。

そのコミュニティーの特徴は、メッセージングアプリの個人アカウントの活用方法です。個人アカウントの最大のメリットは、SNSのタイムラインのような場所に、公式アカウントではできない投稿・情報配信が可能になることです。個人アカウント一つでつながれる友だちは最大5,000人。単純計算で100万人以上のユーザーのタイムラインを活用しています。

さらに1対1のチャットでは、クーポンやキャンペーン情報を配信したり、カスタマーサポート的な対応をしています。ユーザーと非常に距離感が近いタッチポイントである個人アカウントを駆使することで、特別なブランド体験をユーザーに提供できているのです。

玉石氏:中国の現状からは、やはり日本国内とは全く違う新しい景色が見えてきていると思います。キーワードは、KOLを始めとする個人が持っている権限のエンパワーメントが進んでいることでしょうか。濱野さんにお伺いします。今後、日本国内でも個人が主役になることは加速度的に進んでいくと思うのですが、社会やEコマース全体はどのように変わるのでしょうか?

濱野氏:これからは「全てがつながる社会」が当たり前になり、「人」軸のEコマースのようなものが日本でもさらに普及していくと思います。そしてB2CとC2Cは、どちらかのみになるわけではなく共存していくのではないでしょうか。

 


後編はこちらから >>

 

パネルディスカッション「新時代のEコマースプラットフォーム」【前編】

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社入社、同年8月より現職。