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パネルディスカッション
新時代のEコマースプラットフォーム【後編】


Septeni Japan株式会社 第4アカウント本部 コマースアクティベーション部 ゼネラルマネージャー
玉石 和正 氏

株式会社bolome 代表取締役
水野 裕哉 氏

株式会社トレンドExpress 代表取締役社長CEO
濱野 智成 氏

株式会社電通デジタル エクスペリエンス部門デジタルコマース事業部 WEBプロデューサー
東條 周子 氏

株式会社 Mizkan Holdings(株式会社 ZENB JAPAN) 新規事業開発、ダイレクト戦略チーム
ミラーナ イレーネ 氏

楽天株式会社 執行役員
紺野 俊介

 

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日本におけるデータ活用の課題

玉石氏:濱野さんは普段から中国のEコマース事情に精通されつつ、ソーシャルなインサイト分析もされていると思うのですが、日本の国内メーカーさんが参考になる事例はありますか。

濱野氏:データの活用という点において、日本ではまだやりようがあると思っています。

例えば、ECサイトのコメントデータをマーケティングに還元するという点が、サイクルとして回っていないのではないかと思います。データの活用というと、どのようにしてコンバージョンを上げるのか、どのようにして露出を増やすのか、という観点で使われがちです。

中国での事例を一つご紹介すると、某化粧品メーカーさんは、ECサイトのコメントをビッグデータとして集めています。ECサイトのコメントは消費者のコメントですから、消費者視点でモノを開発する際にパネルデータよりも消費者のインサイトがみえてきます。そのデータを商品開発に還元したり、機能開発や価格設定などのマーケティング戦略に活用したりしています。

玉石氏:同様にECサイトのコメントやソーシャルメディアのデータを分析して結果を出したい、という企業は非常に多いと思います。特に大事な点やつまずきやすい点はありますか?

濱野氏:日本では中国ほどソーシャルメディアが普及していないというのが一つの課題だと思っています。どれだけノイズを省けるか、そこからどのようにしてインサイトを導くかという点で、マーケッターの方々が読み取れずに終わってしまい、データを分析・活用しきれていないケースが多いのではないでしょうか。しっかりと分析できれば日本のデータも問題なく使え、活用する価値が十分にあります。

 

パネルディスカッション「新時代のEコマースプラットフォーム」【後編】

 

 

ECサイトの課題を解決するデータの使い方

玉石氏:中国ではC2CのEコマースが大きく成長しているというお話ですが、他方日本国内においてはB2CのECサイトが主になっていると思います。

楽天さんは大手ECサイトであるとともに様々なサービスを展開され、多くのデータを蓄積されているプラットフォーマーです。その視点からメーカー様に向けて、課題解決がどのように進んでいくのかお話しいただけますか。

紺野:以前中国に訪れた際、確かに環境が日本とは全く異なると感じました。中国のインフルエンサーの中に大きな売上げを持つ人が生まれている要因としては、13億人以上の人口と巨大なマーケットがあることも大きいと思います。

その前提で、データを扱う立場として日本におけるマーケティングについて考えると、自社のオウンドメディアで購入してくれる顕在化ユーザーを一部拡張できる可能性はあるものの、類推して拡張し、潜在的なユーザーを獲得することは難しいと思います。

ユーザーのデータを自社で蓄積したいというのは分かります。データの醸成やユーザーとのコミュニケーションは、クライアントさんサイドで行うことです。しかしCookieの使い方も難しくなってきていますので、データの蓄積は弊社などのプラットフォームを活用していただくことが効果的だと思います。弊社は70以上のサービスを展開し、膨大な消費行動分析データを蓄積しています。

玉石氏:私もデータの取り扱いは今後も規制が厳しくなっていくと思います。一方メーカーさん側としてはデータを使いたいという思いがどうしても強く、自社で実現可能なこと以上を求めてしまっている面があるのでしょう。

あと1点。非常にぼんやりとしたお題ですが、「日本の中でのEコマースの未来図」について、紺野さんにお伺いしたいと思います。今後、日本のEコマースがどのようになり、刻々と変わりゆく状況の中で楽天さんはどのようなポジションを目指されているのでしょうか?

紺野:デジタルマーケティング視点の回答になってしまいますが、今後QR決済が一つのポイントになると考えています。デジタルコマースはこれからも間違いなく広がりますが、日本におけるオンラインの市場規模は2018年時点で10%にも達していません。その点をふまえて、残り90%以上を占めているオフラインの決済情報を得るための動きが活発になっているのだと思います。

様々なオフラインのエクスペリエンスを求めるユーザーに対し、一人ひとりが心地よいと感じる広告をいかに届けるか。逆の意味では、ブランド毀損にもつながる過剰な広告を出さないための分析も必要になってきます。

もちろんリーチの問題もありますが、皆さまが日々取り組まれている行動情報が様々な形でデジタル化された時に、ユーザーにデジタルではない空間における心地よい体験をいかに提供するか。これからはそれを実現できる広告プラットフォーマーであり、デジタルプラットフォーマーであり、データホルダーが活躍していく時代になると思います。

 

 

新時代のEコマースとは

玉石氏:「新時代のEコマース」という抽象的なテーマで、登壇者の方々に様々な角度から紐解いていただきました。

場所として機能していた時のECサイトは、ユーザーがその中で回遊したり特定の売り場で買い物をしたりしていくというものでした。ところが現在の潮流は、人もプラットフォームになり、オウンドメディアやコミュニティーなどに細分化が進んでいます。新時代とまでは言えないもののこの流れをふまえると、今回のテーマ「新時代のEコマースプラットフォーム」は、もはやEコマースネットワークやEコマースエコシステムという表現を用いた方が、回答として適切ではないかと思います。

では最後に登壇者の方々から、新時代のEコマースについて総括していただきたいと思います。

東條氏:ユーザーが求める理想の体験があるのと同様に、商品・サービス側にもお客様に提供したい理想の体験があると思います。それぞれのブランドやクライアント様ごとに細分化して、その2つの理想が交わる場所を提供し、支援することを目指していきたいと思います。

ミラーナ氏:Eコマースはあくまでも1つのツールです。ブランド側としてはお客様とつながるものに過ぎません。自社のオウンドメディアだけではなく、様々な形のEコマースが増えネットワークもさらに広がって、お客様により良いモノやコトを提供できる形になると良いと思っています。

水野氏:弊社は中国向けの越境ECを行っていますので、たとえばクロスボーダーであれば越境ECだけではなく、デバイス間やリアルとオフラインなど今までは分断されていたものが、インフラやツールの進化により、滑らかにつながっていくのではないかと考えています。

濱野氏:分散と結合だと考えています。Eコマースに関する選択肢が多様に分岐していくと同時に、分岐したものが随所で結合していくのではないでしょうか。特にオンラインとオフラインにおいて顕著にそれが表れるのではないかと思います。

紺野:利便性と可能性を提供できるのが新時代のEコマースだと思います。すでにO2OやOMOを行われている企業は多くあります。しかしまだ本当の意味で、ユーザーの生活体験を豊かにすることはできていないと思います。これからそれが実現できる世界になっていくのではないでしょうか。

インターネットは、みんな楽しいから使っているのだと思います。Eコマースも同様です。次のEコマースが、ユーザーを楽しませたり様々な感情を喚起できるものになれば、自然とそこに消費行動が生まれ、様々な人やブランド、メーカーが新しい役目を果たすようになるのではないかと思います。

 

パネルディスカッション「新時代のEコマースプラットフォーム」【後編】

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社入社、同年8月より現職。