これからのECに求められること
安藤氏:皆さんの話の中で様々なキーワードが出てきましたので、一点ずつ深掘りをさせてください。
まず盧さん。中国では、売り上げの半分以上がEコマースになっているメーカーもあるという点で、国内最大のEC事業者である楽天さんとしては、今後日本でどのようにEコマースが拡大・普及していくイメージでしょうか?
盧:ユーザーがEコマースを使う理由を概括的に2つに分けると、1つは買い物する場所として便利だから。もう1つは、そこで知り得る情報に惹かれて。この2つのパターンがあるのではないかと思います。
前者の代表的な例は水などの飲料です。特に都会の方はEコマースで飲料を頻繁に買われます。飲料は重いので大量に買って持ち帰るのが大変だからです。一方、地方の場合は車で買い物に行く方が多いため、飲料をEコマースで買う方は多くありません。
飲料の話は一例ですが、このようにユーザーが買い物をする際に利便性を追求していくと、Eコマースが伸びていくというのが1つ目のパターンです。
2つ目のパターンは、先ほどの生井さんのお話ともつながります。いまの時点においても、特定ジャンルのプロダクトではEC化率が約20%の商品も存在します。そんな商品の特徴は、購入するとどんな良いことがあるのかしっかり価値訴求ができていることです。
生井さんのお話に出てきたシャンプーも、インターネットが登場したことで、ユーザーは様々な情報から自分の価値観に沿った商品を買うようになり、成分や効能などの説明が十分でないと手に取ってもらえなくなってきたのだと思います。
昔は画一化されていた消費者のニーズが多様化したことで、他の商品とは異なる付加価値をつけて高単価で販売するという流れが進んでいくと思います。そしてその商品の価値を訴求するという点では、デジタル媒体には制限がありません。使い勝手が向上していき、連携してEコマースが伸びていくといったシナリオもありえると思います。
中国の場合は、大手のWebメディアがコマースの起点となり、様々な媒体やサービスを展開しています。すべてのデータはつながっていて、企業がどこでどのように動いたら、どんなユーザーが動き、最終的に購買につながるのか、すべてデータで分かっています。それが2012年以降中国のEコマースが急伸している一つの要因にもなっています。
安藤氏:生井さん、今の盧さんのお話と、さきほどご自身が触れられていたレビューに関して、いかがでしょう。
生井氏:先ほど例として取り上げた「メリット」というシャンプーは、ロングセラーブランドです。弊社は2年ごとに改良を行い、あわせてテレビCMも変え、積極的にGRP(Gross Rating Point/ 延べ視聴率)も投下します。でも私は、それではもったいないのではないかと思っています。
「メリット」の元来の価値は泡立ちです。ふわふわの泡が地肌の隅々まで届いて、小さなお子様の弱い力でも洗い流せるのが、本来の価値なのです。ところが改良を重ねることによって、新しくなった点だけをユーザーに伝えてしまうので、他社の製品と比較すると本来の価値があまり伝わっていないのではないかという課題があります。
結局テレビで伝えられないものは、いろんな媒体を使って伝えるしかないと思います。