テレビ業界が何をすべきか?
安藤氏:続いて「テレビ業界が何をすべきか?」というテーマに入ります。先ほどまでのお話をふまえ、テレビ業界が展開すること、購買やコマースなどと連動していくことという観点で、その障壁になっていることや解消すべき課題、もしくは構想などはありますでしょうか?
盧:私たち楽天はメーカーと共有する「ユーザーに物を買っていただく」というゴールに向け、いかに時代に適した広告を作るかに注力しています。その過程においてテレビは、一度に多くの人にリーチする手段として、かなり重要であると考えています。
ただ今の時代、テレビにはビジネスのレイヤーとは全く異なるところで「情報を届けること自体が価値」という役割もあるのだと思っています。
安藤氏:確かにビジネス以外の役割とか責務としての面が大きいですね。
盧:やはりその前提がありますので、そういう観点でビジネスを展開されているのだと思います。ところがユーザーに物を買っていただこうとする楽天の立場からすると、伝え方を変えていかないと、これから非常に厳しいと感じています。リーチを取る大きな力をテレビは持っているので、従来の手法から脱却し、どう伝えるかという観点から新しいビジネスを構築していきたいと思っています。
生井氏:メーカーの立場でお伝えすると、メーカーは苦しんでいます。良い技術を作っても、それをなかなか伝えられない。技術的には絶対に勝っているのに、それが伝わらない。というのが最大の課題です。
ユーザーに商品が届くチャネルとしては、流通、「楽天市場」などのECサイト、メーカーが直接届けるB2Cなどがあります。従来のコミュニケーション形態では、広告代理店、テレビ局などを経て、私たちメーカーが伝えたい事がユーザーに届くまでに変わってしまう可能性がありました。今は、直接ユーザーとコミュニケーションを取ることが求められている時代であるといえます。
本日このような機会を得て、様々なコミュニケーションを取らせていただき、良いアイデアがスピーディーに出てきそうな気がしました。業種を超えた座組みを作りながら、それぞれの垣根を取り払って議論を深めることが一番良い、ということを広めていきたいと思います。
安藤氏:テレビ局から広告代理店、広告代理店からメーカーと、作業をするだけの線でつながったフローになってしまうと、昨今の多様な変化に対応できない。全員でプロジェクトを行わないと変化は望めない、ということですね。
下川氏:Eコマースのようにダイレクトにユーザーが物を買う時代になった今、より深くスポンサーの意向に耳を傾けるなど、仕事においてのプロセスもスポンサーサイドとダイレクトに繋げていく必要があると思います。広告規制や自主規制等々のコンプライアンスなども、時代の変化によって色々と歪みを生んでいると感じています。
また番組を制作しているテレビ局側の人たちも、自分たちの番組が誰にどう見られているのか、もっと認識した方が良いと思います。それを認識することで「私の番組にはこんなファンや視聴者がついているので、広告をここに打つと、こんな良いことがあります」と具体的に説明できるプロデューサーが増えるはずです。
今の時点で私たちが把握しているのは「恐らく20代の女性が見ています」というような、ぼんやりとしたものでしかありません。ただ「TVer」のデータはもう少し精緻に取れていますので、そのデータをうまく活用し、「テレビでもこのように見られています」と、ソリューションの提供をできるようになれば良いと思っています。