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楽天の広告のこれから


楽天株式会社 副社長執行役員 CRO メディア&スポーツカンパニー プレジデント
有馬 誠

 

楽天の成長

 「デジタルマーケティングは、20年前と比べて進化しましたか?」と、最近聞かれることが多いのですが、決まって「ある意味では進化しましたが、未だ道半ばです」とお答えしています。

 確かに昨年の時点で、インターネット広告費は1.7兆円。テレビ広告費に次ぐ規模にまで成長しています。しかし「インターネット広告・デジタル広告・デジタルマーケティングにおいて、広告の効果を数値化し、その数値を基に次のアクションを考えられるようになる」という、私が思い描いていた進化はまだ道半ばと考えています。

 

楽天グループ概観

 

 現状、1.7兆円の広告費の大部分はインターネット事業をビジネスとしている会社が占めており、メーカーさんなどを始め、オフラインの仕事が大半を占めるプレイヤーはまだまだ多くいます。また、大部分の人がデジタルで使っている金額は全体の10%程度であると考えられ、個人消費のEC化率もまだまだ少ないと言われております。もちろんまだ大きくなる余地があるともいえますが、マーケティングという意味では十分に役割を果たせていません。

 しかしながら、ECプラットフォームの広告費は、昨年の時点で約1123億円。2019年は1400億円ほどに拡大すると言われています。2019年のインターネット広告費は恐らく2兆円に届き、テレビ広告市場を超えて最大のメディアになるでしょう。

 

インターネット広告市場へのインパクト

 

 弊社の2018年の取扱高は963億円でしたが、今年四半期毎の前年同期比は、第1四半期が+17.6パーセント、第2四半期が+18.1パーセント、第3四半期は+24.4パーセントと堅調に推移しています。2019年通年の取扱高は1,000億円を超えると予想しており、今や楽天はデジタル広告の主要プレイヤーの一角を担う存在になりつつあるということを是非ご認識いただきたいと思います。

 

 

「ID」の重要性

 さて、それ以上に重要なことは、今後のインターネット広告でCookieがもう使えなくなるだろうということです。

 理由としては大きく2点あり、Appleのブラウザ「Safari」に搭載されたITP(Intelligent Tracking Prevention)というプラットフォーム側の動き、そしてCookieの最大の特徴である匿名情報であるという点が、技術の進化により揺らいできたためです。

 Cookie情報を何らかのマーケティング目的で他社へ提供する。提供された側でCookieと照合した結果、個人と紐づき個人が特定できてしまう。そういうことが起こってしまっているため、Cookie情報を提供するときにも許諾を取りなさいという流れがでてきているのです。

 そのためCookie情報を持っている企業は、何らかの目的で他社へそのCookie情報を提供する際、どこで、どのように使われるのかを完全に把握し、そのすべてに対してユーザーの許諾を得る必要が出てきます。もちろん全ての情報を開示して全て許諾を取れば今後も使えますが、現実的とはいえません。

 そこで私たちはCookieに頼ることなく、1億以上の楽天会員と、それに基づく「楽天ID」を活用してデジタルマーケティングを行おうとしています。

 

 

「楽天ID」が持つ力

 「楽天ID」の特徴は二つあります。一つは「正確性」。そのIDに基づくデータが非常に正確だということです。「楽天市場」などのEコマースを使って物を買うということは、購買データなどの消費行動分析データが蓄積していきます。また住所なども正確でないと購入した商品が届かないため、ユーザーが入力する情報は非常に正確です。

 もう一つは「許諾」。ユーザーにはIDでログインしている状況で、楽天の様々なサービスを使っていただいています。非常に身近なIDであるため、楽天は個人情報保護の観点から様々な説明を行ってきました。もともと毎日のように使うIDなのでコミュニケーションが密であり、許諾を得る際にも、きちんと納得した上で入っていただいているという点が大きなポイントです。

 「正確性」と「許諾」、その両者を合わせて私は「ID のクオリティ」とよんでいます。最近はウェブサイトやアプリ、サービスなど、様々な場でIDが使われるようになっています。しかしデモグラフィックデータだけでなく、様々な情報が蓄積されている「楽天ID」は、その正確性やユーザーとの距離感が全く異なります。私たちは「楽天ID」の「ID のクオリティ」について、圧倒的な自信を持っていいます。

 Cookieが使えなくなる可能性があるこれからは、IDを活用したマーケティング活動が必須になってくると思います。「楽天ID」とクライアントの皆さまのデータを活用しつつ、しっかりとユーザーの個人情報を守って嫌われない広告を出す。そしてユーザー一人一人に納得をしたうえで商品やサービスを買っていただけるという広告を、皆さまと一緒に作っていきたいと思います。

 冒頭で「道半ば」とお伝えしましたが、正々堂々としたマーケティングを行っていければ、一歩ずつゴールに近づけると考えております。

 

有馬 誠「楽天の広告のこれから」

 

 

有馬 誠
有馬 誠Arima Makoto
楽天株式会社 副社長執行役員CRO メディア&スポーツカンパニー プレジデント


1956年、大阪市生まれ。京都大学卒業後、倉敷紡績株式会社(クラボウ)入社。株式会社リクルート、ヤフー株式会社 常務取締役、グーグル株式会社 代表取締役を歴任。2017年7月、楽天株式会社 副社長執行役員兼CROに就任。同年、楽天株式会社と株式会社電通の互いの資産・知見を融合したジョイントベンチャーの楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長に就任。2018年7月 メディア&スポーツカンパニープレジデント就任。