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IDとデータで実現する、新しい広告の世界


楽天グループ株式会社 執行役員
紺野 俊介

 

2020年に向けた楽天の取り組み

 各広告主様がなぜ楽天を使うのか? 楽天を使うと何ができるのか? それらを皆さまにお示しするべく、2019年、取り組んできました。

 今インターネットの世界は様々な意味で疑問が投げかけられ、その形が変わろうとしています。そんな中、当社が注力し、2020年も注力していこうとしている領域は4つあります。

1.「楽天市場」を活用したブランド向け広告
2. ポイントインセンティブ広告
3. プログラマティック広告
4.「RMP - Omni Comerce」

2020年に向けた楽天の取り組み

 

 私たちの最大のデータアセットである「楽天市場」を使った広告に関しては、「楽天ID」でユーザーと接点を持っておりますので、2020年も引き続き購買データをはじめとする消費行動分析データに基づいた様々な販促・広告を通じてアプローチすることが可能です。この領域では、すでに多くの企業様と大きな取り組みができていると思います。

 一方、課題としては、この10年で国内の多くがリザベーション型広告から運用型広告にシフトしつつある中、当社の広告取扱高の中ではまだリザベーション型広告が70~80%を占めていることです。

 そのような環境で、これまで世の中のトレンドと相関せず成長してきた楽天の広告を、今後いかにプログマティックなモデルに変化させて広告主様と向き合えるかを考え、ファーストパーティーとして持っているDSP(RMP – Display Ads)を中心に、さらには一部サードパーティーのDSPを活用して私たちのIDやデータと繋げることができる広義のDSP事業なども含め、私たちはこの1年間、少しずつですがプログラマティック領域における事業も作ってきました。

 従来、Cookieベースで行われていたリターゲティングやリマーケティングは、今後非常に難しくなっていきます。そんな世の中のトレンドに応えることができる私たちの手法の一つとして、楽天はIDをキーにプログラマティック広告を提供する仕組みを実現させる予定です。

 また、一般的にオムニコマースと呼ばれる領域では、オンラインとオフラインを一体化して見ることが非常に難しいとされています。しかし私たちは、楽天エコシステムの中で「楽天ID」や「楽天スーパーポイント」など、日本国内で最大級のデータを蓄積しユーザーとコミュニケーションを取ることができるため、少しずつですがオンラインとオフラインを一体化して見るということを実現することができています。

 

 

「楽天スーパーポイント」

 「楽天スーパーポイント」には2つの特徴があります。

 まず、楽天エコシステムの中でユーザー体験に対して提供されるポイントであるということ。特定の商品やサービスに対してではなく、ユーザーが楽天グループサービスやパートナーなどの様々なチャネルで何かを購入したりキャンペーンなどにエントリーしたりする行動に付与されるものなので、広告主様は、自社のブランド毀損やサービス毀損を懸念する必要がありません。

 もう1つは、ユーザーと楽天とのコミュニケーションツールであること。どれだけ大量にユーザーのIDを蓄積していても、それだけでは広告に活用することはできません。ユーザーに明確に許諾を得たうえで情報を提供していただく必要があります。私たちはその許諾を得る際の重要なツールとして、この「楽天スーパーポイント」を有効活用しています。

 

 

オンオフ統合マーケティング

 オンラインとオフラインの統合は、「楽天ID」をベースに行います。多くのO2O事業者は、ファーストパーティーデータを1種類しか持っていないため、複数のデータを繋ぐことができず、施策を実行するためには仮説や統計データに頼ることになってしまいます。しかし楽天の場合はオンライン・オフライン双方で幅広いサービスを利用することができる「楽天ID」がありますので、それらを繋げることが可能なのです。

 

 

一気通貫した施策の実行と効果の可視化が可能

 「楽天ID」を起点とした、オンラインもオフラインも含む購買。この2つを、「楽天スーパーポイント」をキーに可視化していきます。

 私たちの「楽天ID」は正確性と許諾の信頼性が高いIDです。ある媒体のデータと当社のデータを照らし合わせたところ、大きな差があったこともありました。

 もちろん、他社もデータの精度を上げる試みをしているとは思いますが、楽天の場合はベースとなるデータが正確であるため、例えば拡張ターゲティングをしたとしても、そのデータも精度の高いデータとなり、IDで補捉することができる行動データ起点の施策を高精度で展開することが可能なのです。

 

 

高速かつ効果的なPDCAを回すことも可能

 どの業態の事業者様でも、マーケティング施策を行った際に「PDCA」という言葉は必ず出てきますが、オンラインとオフラインの双方で施策を実施したり、1つのデータとして管理したりすることができないため、どうしても計測の重複やタイムラグの発生が出てしまいます。

 その課題は、1つのIDでデータを管理できれば解決します。広告配信ID・購買ID・顧客IDなど、各タッチポイントのデータを共通のIDで蓄積できる「楽天ID」を活用した楽天の広告事業では、高速かつ効果的なPDCAを回すことができるのです。

 

 

楽天データ×ID×Future

 現在試みている取り組みの一つに、テレビのデータとの統合があります。すでに一部で実証実験を始めており、パートナーシップを組んでいる電通様と共同でデータの連携を進めています。

 「楽天ID」でログインしてテレビを視聴したり、私たちが運営している「Rakuten TV」というサービスを経由したりすることで、特定のテレビCMを見たユーザーが実際に購買したかどうかの情報を分析することができるという世界観を、近い将来実現できるのではないかと思います。

 私たちは、楽天エコシステムの中で「楽天市場」や「楽天トラベル」をはじめとしたフィンテック、デジタルコンテンツ、通信など70を超えるサービスを運営し、ユーザーと多種多様なタッチポイントを持っています。さらに楽天以外のサードパーティーと連携することができるデータ、連携することができないデータ、企業様のオウンドページにだけ活用できるデータ、これらを区分けして管理することもできます。

 そしてそれら様々なサービスの多くを1つのIDで利用できるのが、日本国内の最大のプラットフォーマーである所以です。

 

 

つながるオフラインデータ

 楽天エコシステムは、オフラインにも少しずつ、様々な形でタッチポイントを作っています。マーケティング施策の効果検証においても1つのIDで管理することが可能であるため、ラストコンバージョンだけではなく、すべてのプロセスがIDを通じて分析できるのです。

 購買に関しても、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、外食チェーン、百貨店など、「楽天スーパーポイント」をベースとしたパートナーシップが進んでいます。一般的な決済サービスでは購入のデータは残っても、何を買ったかまではデータには含まれていません。そのため今の環境下では基本的に、広告主様に提供する広告商品としては成り立ちづらいのが現状です。

 一方楽天の場合、「楽天ポイントカード」の加盟店でユーザーが商品を買った際に「楽天スーパーポイント」が貯まるという仕組みを提供しています。加盟店の許諾があれば、「楽天ID」を持つユーザーがどこで何を買ったかというデータを分析することもできるのです。

 

 

オフラインデータの活用

 私たちは非常に多くのデータを蓄積しています。「楽天スーパーポイント」を経由して分析に利用させていただくデータ、ロケーションデータやオフラインのデータなどこれらを明確に分けることで、最終的に「楽天ID」をベースとしたマーケティング施策というものを作ろうとしています。そのため、広告として使わせていただくデータを「楽天ID」に基づいて増やすこと、そして分析に使わせていただくデータをより多く集めるため、楽天ポイントカードの加盟店を増やしていくこと、という点に注力しています。

 

 

位置データの活用

 ロケーションデータについても、多数のデータホルダーがいらっしゃいますが、広告として使用する場合は許諾を取る必要があります。私たちは「Super Point Screen」というサービスを通して、「楽天スーパーポイント」を提供する代わりにユーザーからロケーションデータに関する許諾をいただいております。

 重要なのはこれが「楽天ID」に基づいていることです。ロケーションのデータだけでは価値はあまり高くありませんが、それが「楽天ID」と連携していることで、実施できるマーケティング施策の幅が非常に広がります。具体的に何が可能になるかというと、位置情報に基づいた広告配信、具体的には指定エリア周辺にいるユーザーへの広告配信、ユーザーの位置情報履歴に基づく広告配信などです。今後さらに、明確に広告として使えるロケーションデータを増やしていく取り組みを行っていきます。

 

 

楽天が実現する、デジタル広告の世界

 

楽天が実現する、デジタル広告の世界

 

 楽天のデータを自社のオウンドメディアや他の企業で利活用することを検討されている方もいるかもしれません。その際の留意点としては、楽天のデータがサードパーティーのデータになってしまうことです。しかし楽天のドメインの中に何らかのページを持っていただければ、前述した楽天が蓄積する分析データ、広告として利用可能なデータと連携させることが可能です。

楽天レシピ
 「楽天レシピ」では「楽天ID」により訪問ユーザーが普段どんな料理に興味を持っているかということがわかります。そのため、食品・食材メーカー様や食器器具、場合によっては飲料を扱う企業様がそのユーザーとの接点に広告を配信することができます。さらに、様々な形で利用許諾を得たロケーションデータと組み合わせると、スーパー様やドラッグストア様が店舗の近くにいるユーザーにクーポンの広告を配信することなども可能です。

Rakuten Pasha
 オフラインにおける取り組みとしては「Rakuten Pasha」というものがあります。毎日更新される「トクダネ」といわれるクーポンを獲得し、オフラインで該当商品を購入してからレシートを撮影して送付すると「楽天スーパーポイント」を獲得できるというものです。これらのデータは、ユーザーの許諾を得たうえで広告配信や分析などに活用することができます。

楽天Infoseek
 楽天というと、「楽天市場」や「楽天トラベル」などに出店するメーカー様や施設の方が中心でした。しかし「楽天ID」をベースに「楽天Infoseek」というポータルサイトを活用していただければ、今までフィットしなかった業態のお客様もさらにビジネスの幅を広げていただけると考えています。

 

 

シングルIDマーケティングの将来構想

 デジタルサイネージに関しての取り組みも、少しずつ始めています。この領域も一般的には性別や年齢を判断できるというものですが、私たちには「楽天ID」があります。

 例えば、「店舗に設置されているビーコンに接触すると『楽天スーパーポイント』がもらえる」というアプリがあった場合、ユーザーの許諾を得ていれば、ビーコンに触れた時点でそのユーザーがどんなユーザーかということが識別できるのです。

 実店舗に来店したユーザーとのコミュニケーションなどにも、このようなサイネージやロケーションデータが活用できるのではないかと考えています。

 

 

まとめ

 楽天は「楽天ID」をベースとした様々なデータを蓄積しています。「楽天市場」の中にページを持っていただければ、多様な広告タッチポイントやデータを活用した集客、そして販促までを行うことができます。

 また、自社の商品を購入したユーザー層も、購入しなかったユーザー層も、さらには同種の商品を購入したユーザー層までもが可視化されます。そのデータを拡張したり限定したりすれば、楽天の持つ様々なサービスを使用して商品の拡販ができるのです。

 このように、楽天はこの1年間でプログラマティックやオフラインを中心に様々なことに取り組んでまいりました。今後も引き続き広告主様とご一緒に様々な課題に向き合っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

紺野 俊介「IDとデータで実現する、新しい広告の世界」

 

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。