オムニコマース市場におけるマーケティングソリューション

楽天グループ株式会社 執行役員 グローバルアドディビジョン
紺野 俊介

楽天がマーケティングに提供できる価値とは

 デジタルマーケティングに携わって15年、楽天に入社したのは3ヶ月前です。それまでは、デジタルマーケティングエージェンシーの代表と、運用型広告のトレーディングデスクの責任者を兼務していました。

 これまでは、サードベンダーという立場上、なかなかクライアントのデータにタッチできず、仮説に仮説を当てたCPAやCPCという結果が本当に役立っているのか疑問を感じていました。また、チャネルが複数生まれたことでコンバージョンに多くの重複が出るという課題に答えが出せない悔しさも抱えていました。ユーザーにとってはノイズでしかない広告が出る、リターゲティングの名のもと刈り取らなくても成果になるユーザーに対しても無駄に広告配信をしてしまう、さらにはABテストで配信した大量のバナーがブランド棄損をまねくリスク等、様々な点に忸怩たる思いがありました。

 私は、楽天では何でもできると思っています。楽天の広告ビジネスをリードしていく立場として、クライアントの皆さまに楽天がどのような価値を提供できるかを具体的に提示していく所存です。

オムニコマースとは

 オムニコマースとは「何らかの形でインターネットを介するすべての消費」を指す造語です。

 

オムニコマース=何らかの形でインターネットを介するすべての消費

 

 ECを含むオムニコマースの市場は53兆円で、日本の小売全体の販売額143兆円(2017年)の37%を占めています。

 そもそもオムニコマースというキーワードの一つでもあるオムニチャネルは2011年にアメリカの百貨店メイシーズから始まりました。多角化していく販売チャネルの区別をなくそうというものです。リアルな店舗をなくしていこう、EC内にすべての商品を置こうというわけではありません。

 しかし、シングルチャネルがマルチチャネルと呼ばれるようになり、インターネットの登場でオムニチャネルに変わり、さらにユニファイドコマースという言葉まで出てきている昨今、市場の変化は明らかです。これにより購買体験も変化してきていることは、皆さまも実感されているのではないでしょうか。

 例えば、今年6月に楽天のグループ会社となったアメリカのCurbsideは、モバイルでオーダーを受けると、その位置情報で来店時間を予測し、車上のユーザーに商品を渡すというサービスを提供しています。このように、購買データと属性データだけでなく、更に位置情報データ等をつなげることが、オムニコマースにおけるマーケティングには不可欠といえます。

 

オムニコマースで蓄積される様々なデータ

 

楽天ビックデータの利用価値

 データをつなげることの重要性は理解していても、実際に社内の様々なデータを一つに統合できている企業はそう多くないのではないでしょうか。データを統合するシステム構築には最低でも数千万円レベルのコストがかかります。数十万円で小さなソフトウェアを導入しても、中々やりたいことが実現できないのが実態だと思います。

 その点楽天は、70以上のサービスの利用情報を、楽天IDを軸に統合しています。「楽天では何でもできる」というのは、例えば、約9,900万の楽天IDと購買データ、位置情報データを掛け合わせられる点です。このようなサービスを提供できる企業は、楽天の他にはないのではないでしょうか。

 昨今話題のAIも、データがないと何もできません。しかし、膨大なビッグデータを保有する楽天なら、様々な試みができる。これは大きな強みです。

 さらに、楽天ポイントカード・楽天Edy・楽天ペイなど、複数のFinTech関連のデータを活用していくことも視野に入れています。これは広告への活用のみならず、ユーザーとの様々なコミュニケーションを考える上で極めて有用です。

 

購買データ=「買った」という究極の証明

 

位置情報で可能になるマーケティング

 位置情報データは、ジオフェンスの技術に活用できます。

 例えばマンションを購入する場合、比較的住み慣れた生活圏の近辺で決める傾向があるようです。子供が生まれたら実家が近い方が便利など、現実的な条件が重視されるためです。ジオフェンスを用いれば、この起点をベースに1キロ範囲など距離を設定し、広告を出すことが可能です。コンビニエンスストアなど、リアル店舗への来店促進には、数百メートル単位での設定が効果的でしょう。それにより得られた「来店した」という究極の証明は、ユーザー分析や時間帯の計測などに役立ち、次のアクションへとつながるはずです。

 

位置情報データで可能になるマーケティング

 

データ許諾取得をクリア

 楽天のビッグデータの活用は、全て厳密なルールと許諾に基づいたものです。

 例えば「Super Point Screen」というアプリです。データ活用を許諾しているユーザーは現在約100万人で、このアプリをダウンロードすると、ユーザーの許諾のもと、ロック画面に広告が表示されます。また「Super Point Screen」では、ユーザー許諾のもと位置情報を取得しています。企業がタッチポイントして望んでいる場所にユーザーがいる場合、待受画面にブランドの広告が出ます。それをユーザーがスライドすると楽天スーパーポイントがもらえる仕組です。

 

常時時待受画面に広告を掲出・位置情報データも蓄積

 

広告接触から店頭購買までを実数計測

 

 この情報に、「Rakuten AIris」(独自のアルゴリズムで消費行動を解析することで購買の見込みがあるユーザーを抽出することができるAIエージェント)などから得られた各種分析データも合わせれば、一層効果的にユーザーを拡張することが可能です。

 また、参入を予定しているMNO(携帯キャリア事業)では1,500万ユーザー獲得を目標に掲げていますので、ここでまた加速度的にデータが増える見込みです。

オンラインとオフラインが一つの世界に

 オンラインを基点としている企業の方々は当然オンラインの限界を意識していると思いますが、Rakuten Marketing Platformは、広告配信だけでなくオフラインに出ていくための支援をすることが可能です。

 また、非常にハードルが高いとされるオフラインからオンラインへの参入においても、Rakuten Marketing Platformの「RMP - Brand Gateway」を活用することで、楽天市場という場を通じユーザーと様々なコミュニケーションを図ることが可能です。

まだまだ発展途上のRakuten Marketing Platformですが、多くの方々に広くメッセージを伝えるプラットフォ―ムとして、マーケティングに携わる皆さんと共に作りあげていきたいと思います。

グラフィックファシリテーションで見る「オムニコマース市場におけるマーケティングソリューション」

グラフィックファシリテーションで見る「オムニコマース市場におけるマーケティングソリューション」

グラフィックファシリテーションで見る「オムニコマース市場におけるマーケティングソリューション」

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。