生活者の意識と行動を捉えるデータインサイト

楽天インサイト株式会社 代表取締役社長
田村 篤司

生活者の意識と行動を捉えるデータインサイトソリューション

 当社は、マーケティングリサーチを国内・海外で提供してきた楽天リサーチとAIPが統合的にリブランディングした会社です。近年事業強化を進め、現在400名近くのスタッフが年間1200社のクライアント様を支援しています。

 リブランディングを機に、サービス内容を進化させています。すなわち、従来型のマーケティング・リサーチの技と、職業倫理(正確性、中立性)を大切にしながら、より革新的なビックデータを活用した生活者インサイトを今後も提供していきます。

伝統と革新が昇華される未来

国内最大規模のリサーチパネル×ビックデータ

 我々の価値の源泉は、なんといってもそのユニークなデータ基盤です。楽天が持つ様々なデータ、それが楽天IDで紐づいています。更に強調したいのは、このビッグデータ基盤に紐づくリサーチパネルを、国内最大級の規模(220万人)で有していて、意識データも収集し分析することができるということです。このように、行動データと意識データの両方が統合的に分析できるデータ環境は他に類を見ないものではないでしょうか。

楽天インサイトの位置づけとサービス事例

 楽天インサイトの位置づけとして、マーケット全体の理解(一般生活者分析)を支援しています。更に、クライアント様から、「打ち手まで支援してほしい」という要望があれば、楽天の広告サービスやその他広告会社様とも協業し、より詳細な楽天EC分析を行ったり、打ち手へ繋げることが可能です。

 

他に類をみないユニークなデータ基盤

 

 具体的なプロジェクトとして、サッポロビール株式会社様の事例を紹介しましょう。ご相談いただいたのは、ワインジャンルに関するマーケット分析です。マーケット分析・セグメンテーションから、戦略構想、ないし具体的なマーケティング施策を考える材料を得るといったところまで課題をいただきました。従来、ワインマーケットというのは、ワインの産地、種類、価格など、ワインの属性で捉えがちですが、今回は、しっかり生活者を捉えようという狙いから、情緒的ニーズや機能的ニーズを含めた意識分析も重要視しました。

 そこで、アプローチとしてまずは、アンケートを通じて、情緒的なニーズ、機能的なニーズを意識データとして抽出し、ニーズセグメントを作成しました。加えて、価格や産地といった従来型のわかりやすいセグメントも併用に努めました。

意識データを活用した「ニーズセグメント」の構築

 

 次に、そのセグメント別に、楽天のログデータの分析を行いました。ログデータを用いると、アンケート分析とは異なる分析ができます。これらは例ですが、例えば、他アルコールや食品との併売分析、年間トレンド分析、一人あたりの単価・頻度といった売上分解分析です。

 

ログデータを活用した追加的分析

 各セグメントの生活者は、さまざまな情報でプロファイルしています。例えば意識面の情報データでは、ワイン経験やリテラシー、ワイン購買における重視点といったことを捉えることに適しますし、購買ログ分析は、より売上に直結するアクションを考える材料として役立つでしょう。

 そして、繰り返しになりますが、楽天インサイトはマーケット全体の分析を行っています。ですので、ここで得られた示唆というのは、商品開発であれ、広告であれ、マスであれ、デジタルであれ、その後のアクションにおいて活用いただけます。

楽天インサイトパネルの魅力

 楽天インサイトが持つ、リサーチパネルについて補足します。我々のパネルは、国内最大級で、且つ、徹底した品質管理を行い、その信頼性の下、年間1,000社を超える事業会社・広告会社・政府官公庁・研究機関等に利用されています。

 また、モニターの多くは、クッキーやモバイルIDで紐づいているので、類似生活者への拡張性があります。リサーチモニターに対する直接的な広告・販促は、業界倫理上禁止していますが、ビックデータによって類似ターゲットを見つけて、マーケティングアクションに役立てるということができるのです。

様々なリサーチ&インサイトソリューション

 以上、サッポロビール様の事例をご紹介しましたが、楽天インサイトは、このほかにも様々なマーケティング課題の支援を行っています。それ以外の例についてもいくつか概要をご紹介します。

 一つ目は、ライフステージインサイトです。この事例では、女性の出産前後の分析をしています。出産前後というのは、外出しにくい状況のため、デジタルサービスと非常に相性が良いステージといえます。悩み事などの移り変わりがウェブ検索、ベビー関連品の購入に結びつきます。新しいブランドとの出合い、あるいはこれまで使っていたブランドに対して、母親という視点で見つめ直すといったこともあるでしょう。そのライフステージを包括的に理解する分析です。

ライフステージ・インサイト

 

 二つ目は生活者実態を深掘りした例です。通常のインタビューリサーチでは深堀しづらいセンシティブなことやネガティブなことが、ログデータを通じることで、より詳しくプロービングできました。

生活者実態インサイト

 

 以上の通り、我々はマーケティング・プロセスの比較的上流の、生活者理解から支援をしてきました。そして、マーケティング全体をデータトリブンに行うことをより支援してゆこうとサービスを展開していますが、その際、刈り取り偏重にならないように、 潜在ニーズを喚起し、市場を拡大することと、顕在ニーズを刈り取ることの二つの柱の両方を大切にしています。

 

データドリブン・マーケティング支援の二つの柱

 そして、伝統的には、前者ではパネルデータ、後者ではビッグデータが多く利用されていましたが、我々はその二つを統合的に併用し、支援してまいります。

デジタル空間のカスタマージャーニーとリアルな行動観察

 三つ目はデジタルカスタマージャーニーの例です。 この例の通信サービス会社のように、最近は、サービスの理解や比較、さらには利用決定という購買行動を、専らデジタル空間で行う商材、消費者が増えています。一方、このようなデジタルカスタマージャーニーは生活者の記憶に留まりづらいので、ログでしっかりと行動を正確に把握しつつ、一方意識データを用いて、どこに満足、または不満があるのかを把握することで、カスタマー・エクスペリエンスの向上に役立てることができます。

カスタマージャーニー

 

 最後の事例としてあえて、リアルな行動分析。モバイルな時代には、デジタルのコミュニケーションとリアルな行動が絡み合う時代です。ですので、リアルの分析も大切にしています。この事例では、YouTuberとその友人の街歩き、買い物の様子を観察し、インタビューをする。そういったことでもインサイトを見つけ出しています。 楽天インサイトでは、楽天グループのネットワークを通じてYouTuberをリストアップしています。さらに、楽天経済圏にはインフルエンサーが多数います。そのような消費者も生かした分析サービスの提供も始めています。

街歩きエスノグラフィ

 

 以上、コンシューマーリサーチ・インサイト関連のソリューションの概要を紹介いたしました。具体的なサービスについては、一つの型にはまらないことも多いかと思いますので、適宜ご相談いただければと思います。

 新しい楽天インサイトをどうぞ宜しくお願いいたします。

グラフィックファシリテーションで見る「生活者の意識と行動を捉えるデータインサイト」

グラフィックファシリテーションで見る「生活者の意識と行動を捉えるデータインサイト」

 

田村 篤司
田村 篤司Tamura Atsushi
楽天インサイト株式会社 代表取締役社長


1978年、佐賀県生まれ。東京大学卒業後、米国系総合金融グループであるシティグループに入社し、主に投資銀行業務に従事。2009年、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBA取得。その後、米国系経営コンサルティング会社であるブーズアンドカンパニーを経て、楽天インサイトに入社。楽天インサイトでは、マーケティングリサーチ組織の強化、ビッグデータ分析組織の構築、海外事業の拡大(海外10拠点)などを手がける。2016年より現職。