RMP - AdRollで何が出来るのか

楽天アドロール株式会社 代表取締役社長
香村 竜一郎

AdRollとは

 このたびAdRoll Groupが楽天と出会い、結婚に至ったわけですが、なぜこの2社が一緒に事業をやることになったのか、今後どういう商品を作っていきたいのかについてお話しさせていただきます。

 AdRoll Groupは、アメリカ・サンフランシスコに本社を置くアドテクの会社です。現CEO兼 創設者のアーロン・ベルがNASAのアルゴリズムを作る会社にいた頃、Google AdWordsを見て感激し、同じことをディスプレイ広告でもやろうと創業したのがきっかけです。広告主の規模・業種を問わず、どんな方々にも利用していただけるディスプレイプラットフォームを作るというミッションを掲げていますので、広告主の数はアドテクのベンダーとしてはかなり多く、グローバル化も進んでいます。

 

AdRoll国内のお客様-業種別%(2017年売上比率)

 

 2015年3月よりAdRoll日本法人として日本での営業活動を開始しましたが、上の図にあるのが2017 年の売上構成比です。通常リターゲティングがメインの会社の場合、広告主の業種は固まりやすく、特にダイナミック広告は不動産、人材、トラベル、ECに集中しやすい傾向にありますが、多種多様な業種の方々にご利用いただいているのがお分かりいただけるかと思います。

楽天アドロール誕生の背景と目的

 AdRollと楽天の最初の連携は2016年11月。「楽天市場」に出店する店舗向けのマーケティングソリューションをOEM提供することになったのが始まりです。

 「楽天市場」の店舗は規模も商材もさまざまですが、AdRollは多種多様なクライアントに向いているソリューションであったため楽天側のニーズと合致し、高いパフォーマンスを継続して出すことができました。そこで、さらにパフォーマンスを上げるために楽天のデータを生かす試みができないか?という話になり、データ連携をするにはグループ会社になる必要がある、グループ会社になるのであれば、楽天市場の店舗だけでなく楽天市場外の広告主に向けた広告商品も作っていこう、ということで合弁に至りました。

 

楽天アドロール株式会社の概要

 

 この合弁により実現した商品名は「RMP - AdRoll」。パフォーマンスの高いソリューションを楽天のデータを活用して提供し、日本のマーケットに合ったプロダクトの開発を日本独自で行えるようになりました。AdRoll株式会社で持っていたアカウントマネジメント、営業体制は楽天に移管しました。楽天アドロールは、提供する製品の開発、サービス提供にフォーカスします。

RMP - AdRollが実現するソリューション

 もともとAdRollでも『大小問わず、あらゆるビジネスにおいて、顧客データを優れたパフォーマンスのマーケティングへと換えるお手伝いをします』というミッションを掲げ、「データ」を強く意識していました。いろいろなデータベンダーと連携がしやすいしくみを既に持っていたわけです。そこで提供できる価値とは、フルファネルソリューションになります。

 

AdRollが提供してきた価値

 

 購買ファネルから読み取ったデータで提供するソリューションは、ユーザーの興味を醸成し、さらにはビジネスに直結する指標に影響を与えることができます。というのが、CPA (Cost Per Action) あるいはCPC (Cost Per Click) というKPI(指標)だけにフォーカスすると、指標自体は悪くないのにビジネス全体は大きくなっていないという事態に陥りやすい。それを防ぐために、もっとビジネスに直結するようなソリューションを提供すべきである、それが楽天アドロールが考えるソリューションです。

 

楽天市場店舗向けソリューションでの結果

 

 こちらは13週以上連続掲載した店舗のプロスペクティング(PR)/リターゲティング(RT)と、ROAS (Return On Advertising Spend) の推移を見た実際のデータです。赤い棒グラフはプロスペクティングでアッパーファネル向けの機能、青い棒グラフはリターゲティング、ファネルの下の方のソリューションです。開始当初は、アッパーのインプレッションが多くなります。小さい企業様はもともとマーク数が少ないのでリターゲティングしたくてもできない、これは当然の数字です。しかしマーク数をためておいて日数が経過して来ると、リターゲティングのクリック数も伸び、それに伴って緑のグラフで示しているROASも上昇していきました。

  もともとAdRollではフルファネルソリューションを提供してきましたが、楽天のデータを活用することで、上を変えることなくファネル自体を太くすることができる、成果をマキシマイズすることができます。データを使うことで効率がよくなる、将来的にはそれをビジュアライズできたらいいなと考えています。

 

RMP - AdRollの中長期的コンセプト

 

一気通貫、抑制の効いた配信が可能に ―楽天アドロールが提供する新機能

 

楽天アドロールで提供できるプロダクトの価値

 

 楽天アドロールが提供する新たな機能として、クロスデバイス配信、ブラウザ/デバイスを横断した配信制御、そしてProspecting配信を考えています。まず2018年11月から「クロスデバイス希望」の提供を開始しました。大きなポイントは以下の3つです。

 

クロスデバイスのメリット(タイムリーな情報提供)

 

 クロスデバイス配信は、AdRollでもCookieベースでは行っていましたが、これをIDに変えることによって、何が変わるのか。従来のCookieベースでは、たとえば自宅用PCでAという広告を見ても、会社のPCやスマホで同じ商品に関する広告を連続して配信することはできません。しかし同じユーザーだとわかれば、デバイスをまたいでもタイムリーな情報が提供でき、一気通貫した配信が可能になります。

 

クロスデバイスのメリット(多重配信を減らす)

 

また、IDに紐付くことで逆に抑制を効かせることができます。従来の技術でも、ある程度は抑制できましたが完全ではありませんでした。精度が上がることにより、重複した配信を減らすこともできます。

 

クロスデバイスのメリット(既存顧客への配信を減らす)

 

 さらに、今まではコンバージョンでセグメントしたくても、デバイスをまたいだ場合は一気通貫ができず、既存顧客への配信を停止することができませんでしたが、今後はデバイスをまたいでも新規顧客だけにアプローチすることが可能になります。

 RMP - AdRollは、顧客体験にフォーカスした楽天アドロールだからこそ実現できる、新たなプロダクトです。今後の展開に、是非ご期待ください。

香村 竜一郎
香村 竜一郎Komura Ryuichiro
楽天アドロール株式会社 代表取締役社長


消費財やオンライン広告での営業マネジメントや店舗運営などの経験を経て、Google日本法人に9年間勤務。日本を含む、オーストラリア、ニュージーランドの新製品およびソリューション担当執行役員として市場の拡大に寄与。その後AdRoll日本法人の立ち上げに参画、2015年3月のAdRoll株式会社設立発表と同時に代表取締役社長に就任し、事業開発、営業戦略のみならず、顧客視点のデジタル広告ソリューションの啓蒙と普及に努めている。