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パネルディスカッション 有馬・紺野・香村が語る、楽天アドロール

モデレーター:株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部
次世代ブランド戦略室統括 兼 データビジネス責任者 羽片 一人氏
パネリスト:有馬 誠、紺野 俊介、香村 竜一郎

本日モデレーターを務めます、サイバーエージェントの羽片です。サイバーエージェントではインターネット広告事業本部統括とデータビジネス責任者を兼任しており、楽天の担当をさせていただいています。よろしくお願いいたします。

「広告事業売上を2021年までに2000億円」の意味

羽片氏:まず、楽天が広告ビジネスをやると決めた理由、広告ビジネスに注力することになった背景について教えてください。2021年までに2000億の規模にすると発表されていますが、どの領域でどれくらいの数字を作ろうとお考えですか?

有馬:日本のデジタル広告市場でそれなりの位置に立とうとするなら、数千億の単位でないとメジャープレーヤーとはいえない。そういった意味で、2000億という数字を掲げています。
 そもそもECプラットフォームと広告デジタルメディアは別の進化を遂げてきました。楽天はECで収入を獲得するモデル、と言いながらも膨大なPVがあります。では、なぜ広告ビジネスをやってこなかったのか?
 実は楽天は、マーチャント向けの広告は以前からやっていました。でも、外部リンクには公開していなかった。楽天市場を訪れた人に広告を見てもらうのはいいが、外部リンクから離脱されてしまうと楽天の本業の売上に影響が出るのでは、という懸念があったからです。
 ところが今や、ECのプラットフォームの拡大は著しい。外部リンクに飛ばさなくても広告として成り立つのではないか、ブランド広告主としては十分元が取れるのではないか、という状況になってきました。「ならば楽天としてもチャレンジしないともったいない」と、20数年来の付き合いのあった三木谷から声がかかったわけです。それはおもしろそうだ、ということで、楽天にジョインしました。

羽片氏:ありがとうございます。これから楽天のインベントリーを外部の方々にどう使っていただくか、どのプロダクトに注力するのか、どんな予算をとっていきたいのか、そのあたりはどうお考えですか?

紺野:「楽天市場」は非常に大きなインベントリーとIDを抱え、ブランド様とは密接な関連を持って今まさにサービス展開が始まっている状況です。楽天は広く事業展開しているので、オフラインのデータを統合していくことで、更に多くの事業主様と接点を持てると考えています。一部、競合となるクライアント様の事業領域は取扱ができないという制約はありますが、多展開で、ブランド中心としていたところからダイレクトレスポンスまでつなげていけるのではないかと考えています。

羽片氏:我々も広告主様の戦略をブランド・アドダイレクト・販促領域の3つに区切って推進していますが、楽天のプロダクトの中での、顧客とプロダクトのマッチングにはどのようなものがありますか?

紺野:近く、ブランド・アドダイレクト・販促という3つの領域に対して、どういった商品設計でどういったコンセプトをもって取り組んでいくのかを、しっかりと開示していく予定です。普段は楽天市場を中心に話すことが多いため、他領域の展開について聞かれることも多いのですが、IDやデータはブランド・アドダイレクト・販促の3領域に間違いなく必要不可欠なもの。それぞれのパーツに合う商品をマッチングしていけると考えています。

楽天と競合他社は何が違うのか

羽片氏:紺野さんが、楽天にジョインした理由を教えてください。

紺野:さきほどデータやDMPの話をしましたが、エグゼキューション先が意外と見つからない。CPR (Cost Per Response) やCPC (Cost Per Click) の限界がそこにあるなと思っていました。そんな時、たまたま有馬と話をする機会がありまして。そこで、楽天がもつ数字の大きさはもちろん、グローバルの大手企業と戦っていける可能性を感じたんですね。それまで自分がやって来た強みを、さらに拡大できる機会ではないかと。実際中に入って、その可能性は間違いではなかったと思っています。

羽片氏:外から見ていた楽天と中で感じた楽天と、何か違いはありますか?

紺野:楽天という会社は非常に多岐にわたる領域で事業展開をしています。様々な事業をグローバルに展開し、公用語が英語、ダイバーシティが進んでいる、そういったことを実践しているのが、楽天の大きな強みだと思います。

羽片氏:事業間の関係性はどうですか?

紺野:広告ビジネスにおいては、有馬が、各事業を下支えする・広告でつなげるという役割をやっており、各事業は垂直型に立ち上がっているイメージです。各事業それぞれが楽天のビジネスを大きくしていくというミッションを持ち、一人一人がビジネスに向かって真剣に取り組んでいる、というのが私たちの特徴なのかなと思います。

有馬:楽天に来て1年半くらいですが、ビジネスをしっかり進めて行こう、という考えをもった人が多いですね。

インプレッションの価値を上げる 精度の高いリターゲティング

羽片氏:香村さん、楽天アドロールについておうかがいします。DSPと一口に言っても星の数ほどありますが、その中で、楽天アドロールはどういったバリューでいくのか、楽天の強みをどう生かしていくのか、戦略についてお聞かせください。

香村:我々の強みは、フルファネルでユーザーの興味を醸成していくソリューションだということです。通常リターゲティング会社は、ファネルの下の方にフォーカスしがちですが、我々はそうではない。全ページにタグを埋めて、サイト上でどういう動きをしているかに応じて、その人のインテンションをアルゴリズムで解析していき、インテントレベルが「まだ浅い/中くらい/非常に深い」という解析に合わせて広告を配信していく、というのがモデルです。更に、そこに購買という最も強いシグナルを持つ楽天のデータが入ることによって、当然精度は高くなります。また、IDに基づくことによって効率がよくなる、無駄な配信を抑制できるというメリットがあります。
 リターゲティングというと、大量に配信して大量に追いかけていく、というイメージもあると思うのですが、実はAdRollはそこまでインプレッション数は出しません。無駄を省き、1インプレッションの価値を高めるためです。広告主のみなさんにとっては、お財布にやさしくしかもターゲティングがよくなる、精度があがる。そうすると、さらにお財布にやさしい。そこがいちばんのメリットだと考えています。

羽片氏:データとIDを使って、アッパーファネルにどんどん出ていきながら、効率的な配信をしていく、というコンセプトになるのでしょうか?

香村:その通りです。アッパーファネルをやらないと新規は獲得できませんし、ファネルの下だけ狙っていくと既存顧客ばかりになりがちです。そういった意味で、ビジネスを大きくするためのソリューションになり得ると考えています。

羽片氏:競合プロダクトとして意識しているものはありますか?

香村:それほど意識してはいません。ファネル上のいろいろなところでソリューションがありますし、誰でも使いやすい、自由自在に予算設定もできる、一時停止もできる。そういったやさしいソリューションにしていきたいと考えています。

羽片氏:特定のこの業界だけということもなく、すべての広告主様に活用していただくという展開ですね?

香村:そうですね。ただ気をつけたいのはKPIの設定の仕方です。どうしてもKPIをラストクリックだけで見ていくと、他のソリューションの方が結果が出やすい。ラストクリックだけを比較して「そんなに良くないんじゃないの?」と言われることもあります。でも実際やってみると、本当にビジネスに直結にする新規率、ROAS (Return On Advertising Spend) などの指標はしっかり出てきますので、是非そこで見ていただきたいです。

楽天とサイバーエージェント、電通 さまざまなパートナー

羽片氏:御社は「RMP - Trading Desk(楽天DSP)」もお持ちですが、「RMP - AdRoll」と「RMP - Trading Desk」はどういう棲み分けになるのか、それともこの2つはマージされていくのか、教えていただけますか?

紺野:「RMP - AdRoll」と「RMP - Trading Desk」は、配信面で明確な違いがあり、楽天のインベントリーを持っていることとIDを掛けあわせていくことに特徴があります。「RMP - Trading Desk」は引き続き、そして「RMP - AdRoll」はこれからですが、代理店様・広告主様・さまざまなパブリッシャーメディア、どことどのように組むと“三方良し”になるかということを考えながら、展開していく予定です。

羽片氏:そのまま広告主に話しておきます(笑)。

紺野:羽片さん、せっかくの機会なので、楽天の広告ビジネスに対して、サイバーエージェントさんがご期待されていることをぜひお聞かせください。

羽片氏:ありがとうございます(笑)。さきほどデータを使った可視化や購買の話がありましたが、僕は広告とは投資だと思っています。投資に対してどれだけ効果があったか、それをひたすらに追求しているのがインターネット広告ではないかと。だから今ネット広告業界がこれだけ拡大しているのではないかと。消費者との接点はいろいろありますが、それらを最適化していく中で、楽天というプラットフォーマ―は極めて大きいバリューがある。やはりデータとID、これが強烈だと思っています。そこにすべてのヒストリーが集まっているわけですから、これらを使ってクライアントごとに異なるソリューションを展開していける。現状オフラインの店舗もどんどんデジタル化していくでしょうし、人をオフラインでも動かせるデジタルは増えていくと思います。ダイレクトもブランドも販促も、商品を一緒に開発し、あるべき世界を作っていきたい。それが楽天さんとご一緒したい理由、期待でしょうか。

有馬:私が社長をやらせていただいている電通さんとのジョイントベンチャーの「楽天データマーケティング」ですが、設立から1年経ちまして、この1年は大変順調でした。「楽天市場」のような唯一無二のマーケティング・プラットフォームの場合、基本的に取るべき戦略は全方位。どなたにも売っていただき、使っていただく。とはいえ購買データを起点にすることも、ECプラットフォームの中でブランドさんの存在意義を高めていくことも、まだ始まったばかりの新しい分野です。なので、まずは集中してやっていきたい、ということでのジョイントベンチャーです。いいスタートは切れましたが、まだ全方位にソリューションを提供できる状態とはいえず、もう少々時間がかかりそうです。ただ、引き続きいえることはノンエクスクルーシブであるということ。今日、こういった場を設けているのも、できるだけオープンにやっていきたいということの現れです。特に楽天アドロールも、外部インベントリーを開拓するなど、全方位でやらせていただきたいと思っています。

パネルディスカッション 有馬・紺野・香村が語る、楽天アドロール

 

有馬:せっかくの場なのでちょっとお話しますが…実はアイレップに紺野が入社した時の教育担当が香村です。

香村:15年前です(笑)

羽片氏:すごいタイミングでここにそろいましたね。僕からすると、このお三方が同じ会社に集まるって、とてつもないことなのですが……

有馬:もっと言うと、私がヤフーにいた時、アイレップは立ち上がったばかりで、アイレップはヤフーのサーチバナーという商品を専門に売ってスタートされたんですよね。今思えば運用型広告のはしりでしたね。世代的にはおじいさん(有馬)、お父さん(香村)、息子(紺野)みたいな感じでしょうか(笑)。そんな3人が集まりました。

羽片氏:今日は広告主様、代理店様、メディアの皆様、という3領域の方々にお集まりいただきましたが、これらの領域×楽天でやっていきたいこと、各領域の皆さまとどんな未来を描いていくか、最後にお話しいただけますか?

紺野:昨今、インターネットが社会インフラになったことを実感していますが、これまではコマースプラットフォームである楽天の広告ビジネスを周知できていなかった。これを、みなさんと作っていきたいと思っています。是非お気軽にご相談、ならびにご支援ください。

香村:繰り返しになりますが、みなさんと新しいKPIを作って、インプレッションの価値をもう一度見直していきたいです。そうすることで効率がよくなりますし、お財布にもやさしくなります。同時に、みなさんの働き方も変えられるのではないかと思っています。今まで多くあった無駄を省き、明るい世界を作りたいですね。

有馬:僕がやりたいことはただひとつ、購買データ起点のマーケティングです。いいことづくめのはずですので、ぜひみなさんの力を貸してください。「楽天市場」で売っているものしか対象にならない、という概念は忘れてください。「楽天市場」で売っていない業界にもソリューションを提供できますので、まずは、お気軽にご相談ください。

羽片氏:サイバーエージェントも微力ながら頑張ります。本日はありがとうございました。

羽片 一人
羽片 一人Hakata Kazuto
株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部統括 兼 データビジネス責任者


2009年株式会社サイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部にて営業に従事。2010年株式会社CA Beatを設立、代表取締役社長に就任。 メディア事業、アドテクノロジー事業の立ち上げを行う。2014年広告事業本部データ責任者を経て、アドテク領域責任者に。現在はインターネット広告事業本部統括 兼 データビジネス責任者。

有馬 誠
有馬 誠Arima Makoto
楽天グループ株式会社 副社長執行役員CRO メディア&スポーツカンパニー プレジデント
楽天アドロール株式会社 代表取締役会長


1956年、大阪市生まれ。京都大学卒業後、倉敷紡績株式会社(クラボウ)入社。株式会社リクルート、ヤフー株式会社 常務取締役、グーグル株式会社 代表取締役を歴任。2017年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)副社長執行役員兼CROに就任。同年、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)と株式会社電通の互いの資産・知見を融合したジョイントベンチャーの楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長に就任。2018年7月 メディア&スポーツカンパニープレジデント就任。

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員
グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター
楽天アドロール株式会社 取締役


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。

香村 竜一郎
香村 竜一郎Komura Ryuichiro
楽天アドロール株式会社 代表取締役社長


消費財やオンライン広告での営業マネジメントや店舗運営などの経験を経て、Google日本法人に9年間勤務。日本を含む、オーストラリア、ニュージーランドの新製品およびソリューション担当執行役員として市場の拡大に寄与。その後AdRoll日本法人の立ち上げに参画、2015年3月のAdRoll株式会社設立発表と同時に代表取締役社長に就任し、事業開発、営業戦略のみならず、顧客視点のデジタル広告ソリューションの啓蒙と普及に努めている。