購買データで実現するオムニチャネルソリューション


楽天グループ株式会社 執行役員 グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター
紺野 俊介

 

楽天が広告事業を展開する理由

 本日は、楽天の広告ビジネスで今何ができるのかについて、ご紹介いたします。

 楽天が皆様にご提供できるソリューションの最大のポイントは、やはり1億を超える楽天会員、そしてIDです。その楽天IDを通して、私たちは様々なユーザーのインターネット上における「コト」「モノ」の消費データを蓄積しています。

 各企業様でオフラインにおけるマーケティングを行う際、リーチ起点が中心となり購買起点に切り替えるのが難しいという課題があるのではないでしょうか。その課題解決には、楽天IDを起点とした、私たちの「RMP - Omni Commerce」が有効です。

 

RMP - Omni Commerceが最終的に実現すること

 

 オンラインにおいては、表示データ・検索データ・サイト訪問データ・購買データなど、様々なデータが統合されつつあります。一方、実店舗などのオフラインのデータに関しては、主要なデータのデジタル化が十分にできていないのが現状です。

 この課題に対し、私たちはユーザーデータと小売連携データの二つの視点から、デジタル化に取り組んでいます。

 まずユーザーのレシートデータを活用する「Rakuten Pasha」というサービスを開発しました。また、小売連携データとしては、決済サービスの「楽天ペイ」、電子マネーの「楽天Edy」などがあり、「楽天スーパーポイント」を活用して様々な小売店と連携している独自の仕組みを持っています。

 皆様ご承知の通り、オンラインマーケティングを進化させてきたCookieの使用が大きく制限されるなど、世界的にデータの活用に関しては非常に厳しい規制が課せられるようになってきています。そのような転換期だからこそ、当社を含め、様々なコマースプラットフォームが広告事業を展開するという大きなトレンドが生まれているのではないかと考えています。

 

オフラインでもマーケティングは「購買起点」に変化

 

変化例-購買計測を活かした次世代型サンプリング

 

 オフラインにおける既存の広告施策では、サービスとタッチポイントが分断されているため効果計測ができていません。この問題に対しても、私たちはIDをベースにした様々な体験をユーザーに提供することで全体の効果検証を実現しており、徐々にPDCAが回せるようになってきています。

 楽天IDはユーザーの様々なデータと連携しているため効果計測が可能です。また、「楽天スーパーポイント」を活用した、ブランドスイッチを狙ったサンプリングや、新商品にタッチしていただくサンプリングなどの「次世代型サンプリング」も可能です。

 

ユーザーのオフライン購買にアクションが可能に

 これから様々な変化が起きていくと思われるオフラインコマース領域の変化に対して、私たちは「Rakuten AIris」というAIエージェントを活用してサービスの開発や研究を進めるとともに、IDと連携したデータを分析し最適化とパーソナライズ化を行っています。

 前述の「Rakuten Pasha」もその一つです。今年2月にローンチしたサービスで、毎日更新されるクーポンを獲得し、オフラインで該当商品を購入してからレシートを撮影して送信すると、「楽天スーパーポイント」を獲得できるという仕組みです。

 ユーザーが「楽天スーパーポイント」を獲得するためには楽天IDが必要です。これにより、「何を、どこで、いくらで買ったのか」をはじめとする普段の購買傾向を楽天IDと結びつけることが可能になります。

 また、購買計測により併売傾向も明らかにできます。例えば、自社のビールを買っていないユーザーが、そもそもビールを飲まないのか、もしくはビールは飲むものの他ブランドを買っているのかなど、今までは分からなかったオフライン購買の情報も見えるようになるのです。

 IDを起点にすることで、オンラインでもオフラインでもブランドごとに個々のユーザーを色付けできるようになります。インセンティブ・サンプリングが具体的に実現できるようになり、潜在層ユーザーに対してより効果的なアプローチが可能になります。

 

リアル購買データがある楽天だからできること

 小売データとの連携の鍵は、「楽天ポイントカード」です。コンビニやドラッグストアなどの小売店で商品を購入したユーザーに「楽天スーパーポイント」をインセンティブとして付与することで「楽天ポイントカード」の活用を促進し、小売データと楽天のデータを連携させ蓄積する、という仕組みです。

 ただし、これは広告配信のためではなく分析用のデータであり、広告に接触したユーザーが実店舗でどの程度商品の購入に寄与したか、いわゆる「ブランドリフト」を測るために使用しています。パートナー連携で得られるデータを広告配信に直接使用することはしませんが、ユーザー分析においては非常に意義があります。

 この、小売データに前述のユーザーデータを組み合わせた「リアル購買データ」により、クライアントの施策が適切か否かを明確に測ることが可能になりつつあります。

 

アウトプットイメージ-購買リフト-

 

 図はその一例です。リアル店舗での商品に最適なセグメント/クリエイティブでアプローチした場合、非広告接触者の2.3倍の購買リフトを得られました。

 このような施策は、楽天IDを起点にオンラインの広告の配信からオフラインの店舗での購買までを測ることができる、楽天だからこそ可能なことです。

 今まで私たちは、購買起点のマーケティングを「楽天市場」や「楽天トラベル」など様々なオンライン上の購買タッチポイントのデータをベースに行っていました。しかしオフライン購買のデータと楽天IDを組み合わせることが可能になった今、楽天の経済圏の中にタッチポイントを持たれていない広告主に対しても様々なサービスを提供できるようになります。

 

5Gの時代を見据えた楽天の取り組み

 私たちはロケーションデータと広告・マーケティングを組み合わせたサービスにも取り組んでいます。一例として「Super Point Screen」というサービスがあります。ユーザーは楽天の特定のアプリをダウンロードし、「Android」であればロック画面、「iOS」であれば通知などを通して、広告やクーポンに接触します。その接触によりユーザーは「楽天スーパーポイント」を獲得し、私たちは事前に位置情報取得の許諾を頂いたうえで、ユーザーが広告ないしはクーポンに接触したタイミングにおけるロケーションデータを預からせていただくという仕組みです。現在のMAUは100万人ほどですが、今後さらに増やしていく予定です。

 この「Super Point Screen」に、他のロケーションデータを組み合わせることで、さらに多様なGEO広告配信ができます。例えば、過去の行動データを活用した「高いCTRを目指したポイント付き配信」や、現在の行動データを活用した「周辺ユーザーの来店促進」などが考えられます。

 具体的な例として、すでに「Super Point Screen」を導入頂いている某飲食店では、無料クーポンを毎週土曜の5日間配信したことで来店者の新規率は約30パーセントに、新商品発表に関してもインセンティブがなかったにも関わらず、動画広告よりも高い効果が得られています。

 この施策は飲食に限らず、モバイルショップや不動産など、ユーザーに来店してもらうことが重要な業態においては、インセンティブ施策次第で同様の効果を生み出せると考えています。

 

イノベーターセグメントを用いた広告プランニング

マーケティング課題や仮設に応じて、胃のベータセグメントを用いた広告プランニングをご提案

 

 イノベーターセグメントについては、「楽天インサイト」で開発された「イノベーターマーケティング©」を準備中です。「イノベーターマーケティング©」とは、生活者の主観性と行動データによる客観性を担保した独自判別手法により、5つのイノベーターセグメントに楽天会員を分類する、統合的マーケティングソリューションです。

 情報が波及する流れとセグメントに応じたメッセージを考えることで、さらに効果的な広告コミュニケーションを行えるようにするため、準備を進めています。

 5Gによりマーケティングは更なるイノベーションが求められます。生活者の感度や発信力を大事にするために、イノベーター軸で生活者を捉えることが効果的だと考えています。

 これからビジネスを大きくしていく、ビジネスをスタートするタイミングにおいては、いわゆる「(その分野に)興味があり人より先に試したい」、「自分が気に入ったものは人に薦めたい」という層へのアプローチが重要です。そのためにはタッチポイントを増やしていく仕掛けが必要ですので、イノベーターやアーリーアダプターに対するアプローチ手法などにも、現在取り組んでいます。

 私たちが今実現しようとしていることは、楽天の多くのIDを「広告として活用できるもの」と「分析にしか使えないもの」に明確に分類すること、そして「広告として活用できるデータ」をさらに増やしていくことです。

 オンライン、オフライン、ロケーションデータ、さらには5Gを見据えた様々なデータを活用したアプローチをご提供していきたいと考えていますので、是非ご期待ください。

 

紺野 俊介「購買データで実現するオムニチャネルソリューション」

 

 

紺野 俊介
紺野 俊介Konno Shunsuke
楽天グループ株式会社 執行役員
グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクター


1975年、千葉県生まれ。横浜市立大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。デジタルマーケティング事業を牽引し、2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現 大阪証券取引所JASDAQ)への上場に成功。同年取締役に就任。2009年からは10年間代表取締役社長を務め、アイレップを運用型広告でトップクラスの企業へと導く。書籍・コラム執筆や、セミナー講演も多数。2018年7月、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社、同年8月より現職。