―5年以内には、購買ファネルのすべての段階、消費者の心理変容のAIDMA(注目・興味・欲求・記憶・行動)のすべての段階が、連結されデータ化される。この世界が実現すれば、マーケッターが知りたい"Who buys what?"(誰が何を買ったか)の起点となる’Who’’の情報を保有している楽天が、自ずから中心的な存在になるはず、ということですね。
この「5年」というのは、非常に早いように思えます。
現状だけを見れば早く感じるかもしれませんが、こういうものはあるレベルを超えると加速していきます。楽天市場の流通総額も2年前はモバイルとPCは半々でした。それが今ではモバイル経由が6割以上に上がっています。これはスマホの機能が格段にアップし、ユーザーも急増した影響です。
データが連結し、効果的な広告やマーケティング手法がわかってきたら、次のステップは“どういう方法でモノを買ってもらうか”というソリューションです。これには優秀な広告配信メディアが必要です。そこで期待されるのが、日本でも有数のPVと在庫を持っている広告配信メディアとしての楽天ということになると思います。
―この構想をスピード感をもって実現する上で、さらに必要なことは何ですか?
マストジョブとしてデータの整備・統一化という大きな課題があります。例えば同じメーカーの同商品でも、販売店舗によって商品名の入力内容が違うということがよくあります。ではなぜ今まで整備されてこなかったか。正確に入力して使えるデータにする目的が明確ではなかったからです。明確でない目的にお金を投資する人はいない。ちゃんと入力すればマーケティングが変わるとなれば、各社本腰を入れざるを得ない。自ずと統一化が進むという期待は持っています。そんな中でも楽天IDの正確性は群を抜いています、使えるデータの代表格ですね。デジタルマーケティングを変えていく突破口になってくれると考えています。
―楽天の新たな広告展開のひとつの大きな軸として、楽天データマーケティング株式会社の営業がこの10月からスタートしました。設立の背景や今後目指すものについて改めてお聞かせください。
先にお話したように、楽天の二大強みはPVとデータです。これらを生かして楽天としての広告ビジネスをさらに拡大していく、広告媒体としての価値を高めていくというビジョンがあります。楽天内部の広告ページのネットワーク強化や、自動的に広告配信できる仕組みなどが必要ですが、これを機能させるには、今まで分断されていたデジタルとテレビやオフラインを連動させ、購買データ分析し、顧客に提供していける仕組みが必要になります。これが楽天データマーケティング株式会社の設立目的であり、設立後に目指す姿です。電通さんとのジョイントになりますが、電通グループが持つナショナルクライアントを含む顧客基盤、楽天グループの持つPVとデータ、このふたつが結びつくことで、今までにない大きなビジネスチャンスが誕生するのではないかと大いに期待しています。