これまで楽天の広告事業とEC事業は、それぞれで成長してきました。一般的にECサイト上の広告は自社のホームページやキャンペーンページに誘導するという使われ方です。そのためECサイトの中で広告を出すと、せっかく買い物に来てくれたお客様をサイトの外に連れ出してしまうことになり、広告収入は上がっても本来のECの売上が上がらないという矛盾に直面します。このように、外に誘導する広告はECサイトにあまりふさわしくないという大きな事情があったわけですが、昨今、日本だけでなく、世界的にも大きな変化が起こりつつあります。一言で言うと、今まで以上にメーカー様がECサイト上で広告を展開していく必要性が出てきたということです。
背景として、これまでECサイトは、「お店でも商品を購入できるけれどもECサイトの方が安い」とか、「ポイントが貯まる」とか、「重い物だから家に届けてほしい」というようなメリットが主なニーズの源泉だったのですが、例えば、知らない人がいないほど成長している「ボタニカルシャンプー」を例に取ってみると、実は、「楽天市場」で最初に売り始めた商品なのです。まずECサイトで勢いづいて店頭に展開し、ネットでも店頭でも売れ続けて、「楽天市場」の年間ランキングで3年連続TOP2を誇っています。これは、店頭では伝えきれない商品の特徴をECサイトでしっかり説明できたことで商品を理解していただいた結果、購入にも繋がったからです。ECサイトがユーザーとより深い関係を築き、商品のより詳しい説明をする場としても非常に向いているのではないかということが実証されてきているのです。
8月31日 【TOPICS】 有馬誠、「楽天西友ネットスーパー×データが描く未来」を語る
ECサイトの意味合いの変化
EC市場の拡大とこれから
年々、EC化率は右肩上がりで、経済産業省の調査によると現在約6%になっています。また、野村総合研究所の定義によると、オムニコマース市場も約60兆円に拡大し続けています。オムニコマース市場とは何かというと、ネットで買うか、店頭で買うかという形態は問わず、検索や価格比較、モバイルでオーダーして店頭で受け取るなどといった、購買プロセスにネットが深く関与したものを言います。つまり、日本の個人消費の約300兆円のうち5分の1が、何らかの形で購買にネットが関わっているということになります。
これは非常に重要な情報で、ドラッグストアで買うからネット広告は関係ないということではなく、ネット上でしっかりとした広告戦略を持っておかないと、この5分の1を取り込むことができない、ということなのです。EC化率だけを考えるとたかだか6%じゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、自社の売上の全体が100だとすると、そのうちの6%という話ではなく、少なくとも5分の1以上の影響があると捉えていただいた方がよいと思います。商品によっては半分以上が何らかの形でネットが関与して、購買に繋がっていたりするのです。そういう意味でこれからのECは、単に「物を売る場」、「特売の物を売る場」ではなく、「顧客との接点がある場」だということを重視していかなければいけないと思います。
ネットスーパーのポイントは、「新たなユーザーを取り込むことができる」ということ、「商品をより深く説明できる」ということ、「蓄積されるデータをマーケティングに活かすことができる」ということ、この3つです。
オウンドメディアの課題
一方で、メーカー様は独自のオウンドメディアを展開されていると思いますが、中国の例でいうと、某メーカーがなんとオウンドメディアを閉じ、中国のECサイトの中にあるブランド用のサイトに集中することが決定されたのです。これはなぜかというと、オウンドメディアはコンテンツは充実しているものの、訪れるユーザーが既に関与度の高い人たちに偏ってしまったり、飲料系や食品系などのようにそもそも検索される機会が少なかったりするからです。また集まったデータも自社製品の情報としか繋がらないといったことや、データを集めるコストも高く、せっかくデータを集めても再利用しにくい、という問題を抱えています。このような課題があり、既に中国ではオウンドメディアをやめて、すべてECサイトの中でのコンテンツ展開にしようという動きが出てきています。
楽天のソリューション「RMP - Brand Gateway」と「楽天西友ネットスーパー」での展開
楽天でも、その取り組みが始まっています。「楽天市場」にクライアント企業がブランドサイトを設置することができる、「RMP - Brand Gateway」というソリューションを提供していて、既に多くのメーカー様に導入していただいています。わかりやすく言うと、「楽天市場」の中にもオウンドメディアを作り、そこで自社のコンテンツ展開をするということです。「楽天市場」は、お買い物気分のユーザーが常に存在しているため、ふらっと立ち寄ってくれるなどの新規ユーザーの獲得や、商品の広告にリンクを張っておけば、より詳しい説明もできます。そしてもっと大きなメリットは、そこにデータが蓄積されていくということです。データは楽天IDに基づいているので、年齢や性別といった属性だけでなく、楽天グループサービスでの消費行動などがわかります。
この「RMP - Brand Gateway」のサテライトとして、「楽天西友ネットスーパー」でもこれを展開します。「楽天西友ネットスーパー」にブランドサイトを常設で置いていただいて、誘導をかけて、期間ごとにキャンペーンを行います。キャンペーンを実施していないときには、商品の詳しい説明や新商品の紹介など、あらゆる使い方ができるので、ユーザーの反応を見ながらデータを蓄積して、それをマーケティングに活用することができるという仕組みです。
「楽天市場」と「楽天西友ネットスーパー」の両方にブランドサイトを置いていただくとより有効だと思います。そこで徹底的に販売促進、データ収集をすることで、総合的なデータマーケティングに繋がっていきます。さらに、「楽天市場」および「楽天西友ネットスーパー」の購買分析データとテレビの視聴データを連携させると、自社の商品を購入した人が何曜日の何時頃にテレビをよく見る人なのかがある程度示唆されるため、テレビCMと同時にプロモーションをする際に、どの時間帯のスポットを購入すればいいのか、といったことまでわかってくるのです。
AIを活用した拡張ターゲティングのソリューション「RMP - Customer Expansion」
違う切り口の取り組みとして、楽天ならではのAIを活用した拡張ターゲティングのソリューションもあります。あるセグメントやコアな特性を抜き出して、それと似たようなユーザーを見つけて拡張する、「RMP - Customer Expansion」という広告商品です。「楽天市場」および「楽天西友ネットスーパー」で自社の商品を実際に購入した層をシード(種)とすると、年齢・性別はもちろん、楽天グループサービスでの消費行動など、お買い物に関係しそうな、楽天IDのありとあらゆるデータから、それと似た層を見つけます。ここでキーとなるのが、約9,900万の楽天IDです。この楽天IDから購買層のデータをもとに、それと近しい特性をもつユーザーを割り出し、広告配信を実施します。
今後の展望
オウンドメディアに誘導して、それでいいのでしょうか。比較してみると、効果がわかりやすいと思います。拡張技術を使って、より購買に繋がりやすい新規ユーザーも見つけることができ、データの再利用も非常にしやすいという点では、海外でオウンドメディアをやめてしまったというのもわからなくもありません。
「楽天市場」で商品を見て、調べて、実際にはドラッグストアで買うというケースは当然多いと思います。そういうことを考えると、「ECはたかだか6%」という概念ではなくて、個人消費の5分の1はネットと関わっているということを理解していただきたい。この5分の1の場所でいかに戦略的にユーザーとコミュニケーションを取りながら、実際に購買に繋がるデータを確保できるか。企業が存在意義を発揮しながら、単に売上を上げるということではなく、長期的にきちんとデータを取っていくか。これが大きな命題です。それを解決すべく、「楽天西友ネットスーパー」に是非ご期待いただきたいと思います。
プレスリリースはこちらから
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2018/0126_01.html
楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長
数々のインターネット企業で要職を務め、2017年7月、楽天株式会社の副社長執行役員兼CROに就任。また同時に、楽天株式会社と株式会社電通の互いの資産・知見を融合したジョイントベンチャーとして注目を集めている新会社「楽天データマーケティング株式会社」の代表取締役社長に就任、10月に営業を開始した。著書に「ギャップはチャンスだ(日経BP社)」「転職メソッド(しののめ出版)」。趣味はゴルフ、ドライブ。座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」。
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