「データの統合」と「CPCからの脱却」
これらの問題を解決するためには、これまで分断されていた様々なメディアのデータの統合や、CPCからの脱却が必要です。楽天のデータがすごく面白いなと思った理由は、約9,700万の楽天IDがあることです。この楽天IDと購買データやWeb閲覧データなど様々なデータを結びつけることができれば、きちんとした効果測定が可能となり、最終的に、ユーザーに関係性の高い広告を表示することができます。
事例として、昨年9月に「楽天スーパーセール」の告知をテレビCMとWeb広告で実施し、テレビ視聴データと楽天IDを連携させる仕組みを通じて、広告接触と購買の関係を分析したところ、テレビCMとWeb広告の両方に接触したユーザーによる購買率が最も高かったということが実データで分かりました。このデータの連携は、逆に楽天市場で商品を購入したユーザーがよくテレビを見る時間帯にCMを流すことで、購買率を上げることが可能になるのではないかと考えています。
また、オンラインだけでなく、オフラインでも頻繁に使用されている楽天ペイ、楽天Edy、楽天カードなど楽天経済圏の様々な決済情報データが一部POSレジと連携しています。楽天IDとPOSレジデータの連携はかなりのスピードで広がっていますが、このオフラインデータとの連携は、今までにない画期的なことで、今後が期待されています。このように、世の中の様々なデータが集まれば、より効果的なファクトによるマーケティングが実現します。データの連携はまだ限定的ですが、数年以内に全てのデータが連携されるようになってくると思います。
もう一つ、CPCに関する事例ですが、ある商品について、図のようにABCDEの5つのサイトからやって来たクリックが、楽天で実際に購買に繋がったのかという検証を行いました。今までの購入の仕方だと、オークションにかけてCPC が低いサイトから中心に、A、B、C、D、Eの順番で購入していくのですが、実際に一番購買に繋がっていたのはD、E、Bです。つまり、広告主様は今まで購買に繋がらないAやC からばかり購入していたということになります。クリックで購入するとこのようなことが起こるのです。実際に購買に繋がらないクリックとは何かというと、ひょっとするとロボットによるクリックが入っているのかもしれない。クリックで流通したがゆえに、このようなクリック詐欺が出てきたと言えなくもないのです。
クリックが必ずしも購買に繋がるとは限らないということが分かってきた今、これからは購買に結びつくマーケティングに移行していくべきだと思います。自社のブランドサイトにクリック誘導して、それをKPIにしている広告主様も多いと思いますが、そのデータを再利用する際にブランドサイトにデータを集めるのではなく、楽天で本当に購買に繋がったクリックを見極め、そのデータを集めて楽天IDと紐づけて再利用するとより効率的だと考えています。この購買データを基軸とするマーケティングを私たちは事実に基づいたファクトマーケティングと呼んでいます。